更新日:2008年8月19日(火)
特集
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■かねて十勝農業の革新を試みてきた実務者、研究者などが新たなネットワークを形成して挑戦を始める。札幌にある財団法人秋山生命科学振興財団の3年間の支援も得て、すでに具体的活動も始まった。その第一報である。 <全体構成> <上> (1)農業経営者が企業家になる時代 (2)農業を最小経営体の生産者から見る (3)企業化は外部ネットワーク作りから始まる <下> (4)なぜ「十勝」なのか? (5)具体的アクションとして「アース・カフェ on the Farm」の開催 (6)十勝農業イノベーションフォーラムの今後の活動 <上> (1)農業経営者が企業家になる時代 私は農業コンサルタントいう仕事をしています。肥料や農薬等の農業資材、トラクターなどの農業機械の販売もせず、農産物の流通にも関与しないで、ただ、農業経営や技術のアドバイスやファーミング・ビジネスの仕組みづくりなどを農業者から請け負っています。創業して5年になりますが、私のように商材を持たず手ぶらで農業者のコンサルティングをしている同業者には会ったことがないので、恐らく、これまで業界においては、必要とされていなかった職業のようです。 ところが、この1〜2年、状況が変わりつつあるのを実感しています。起業家精神旺盛な農業経営者からの相談が相次いで舞い込むようになったのです。皆、現状の農業経営の将来性に対して漠然とした危機感をもっていました。 私は農業を企業化するように提案しています。これは、農場を法人化するとかいう手続き上の問題ではなく、企業家として農業を経営するということです。 農業経営を企業化するときに、重要なことは、経営理念を持つことと、顧客や仕入先、地域、社会等の利害関係者との関わり方を明確にすることです。また、自然の恵みを享受する産業としての環境保護や社会貢献のあり方に関するポリシーも持ったほうが良いでしょう。 そしてファーミング・ビジネスを発展させようとするなら、自社(農場)を中心とする幅広い人的ネットワークを構築することが重要です、特に農業にとって最終消費者である一般の市民との直接的なコミュニケーションの場が必要です。これまで生産者と消費者が直接意見を交換する機会は、ありそうでなかったのではないでしょうか? 「食」と「農」をテーマとして、消費者と生産者という対極にある立場の人たちが同じテーブルについて議論する機会が求められているのです。 保守的で閉鎖的な農業分野にイノベーションを起こすには大きなエネルギーが必要だと思います。そのエネルギーを市民から集められるようなネットワークの形成を考えています。ネットワークをつくるにも、さまざまな障害が予想されます。それらの障害を乗り越えるためには、運営者側にもタフさが求められるのは覚悟しております。 (2)農業を最小経営体の生産者から見る 農業に関するマスメディアの報道の多くは、農業という産業をまるごと見た総論や全体論で語っています。だから、私たちは業界全体のことしか知る機会がありません。自宅のすぐ近くに畑や田んぼ、牧場があっても、その経営については知りません。 そして、私たちは自分や家族に身近なこととして農業、食の生産現場を感じることができません。消費者はマスメディアを通して農業を高いところから見る習慣が身についてしまっているように思います。本当は、農業という産業を構成する最小経営体である生産者の思いや経営の現状など、各論を知らなければならないと思います。 なにしろ、農業は私たちが「食べる」ためになくてはならない産業であり、他人事ではなく、消費者が自ら支えていかなければなりません。 食の安全や安心についても、本当は私たち消費者が生産現場を知った上で自分自身で判断すべきだし、生産と消費の距離を縮めて双方向の信頼感を築くこと、もっとお互いに関与しあうことが大事なのです。 生産者側から見ると総論で語られる農業は生産者の人的ネットワークを極めて限定的なものにしてしまいました。 今の農業のビジネスモデルは農村部への交通や情報のインフラが整備されていなかったずっと昔につくられたものです。その時代には農協などの限られた取引先だけで成立できたビジネスモデルは素晴らしいものであったはずです。 しかし、時代は変わりました。インターネットの時代には、農業界にも多様なネットワークが求められているのです。緻密なネットワークを構成しようとするとき、最小単位である生産者がそれぞれ持つネットワークが有効になるはずです。 そのネットワークに消費者、市民、企業など、さまざまな属性の人達が関わることで、農業に、農業経営に新たな可能性が生まれる可能性が高まります。今まで気づかなかった農業の持つ価値に注目する人も現れるでしょう。そもそも農業には、食料生産だけにとどまらず、国土や環境の保全や、文化の伝承、美しい景観形成など多面的な機能を持っているのです。 ネットワークが構成されてヒトの動きが出てくると、モノと情報とお金がついてまわります。高齢化して疲弊した農村に人が移り住み、新たなコミュニティやビジネスが生まれる可能性だってあります。 農の現場を始点とするネットワークが地域活性化、地方のまちづくりの鍵は握っているように思います。 (3)企業化は外部ネットワーク作りから始まる 今までの農業生産の現場では、技術については農業試験場や農業改良普及センターが無償で農業者に提供するものでしたし、経営については農協が面倒を見てくれるものでした。したがって、私のような民間の農業コンサルタントなど出る幕がありませんでした。つまり、個別に各農業経営者に接触しようとしても、がっちりガードが固められていてビジネス・スタンスでは入っていけない状態になっています。私は業界のビジネスモデル、いや業界時代がかなり保守的で閉鎖的であることを思い知らされました。 今まで多くの企業が農業への参入を試みているようですが上手くいってないのは、閉鎖的な業界体質と官を含めたガードの高さ、つまり排他性、そして全体主義だからだと思います。 そのような歴史の積み重ねによって農業を囲っている高い城壁に対して、唯一、私ができることは、生産者や消費者のニーズに従って農業を企業化するお手伝いしかありません。企業化の第一歩は、外部とのネットワークの構築です。農業者の中に芽生えた起業家精神を育成するような仕組みは既存の枠組みにありません。その新しい分野への参入なら私にも出来そうです。 しかし、そうは言いつつ何か事業を起こすためには、何かと費用がかかります。多くの利益を出している企業ならいざしらず、駆け出しの農業コンサルタントがやるには経済的な後ろ盾がないと中途半端なものになってしまいます。社会的に大きな効果をあたえるようなネットワーク形成のためには資金が必要でした。 そんなとき、秋山記念生命科学財団が新規事業としてネットワーク形成事業を募集していると聞き、応募を決めたわけです。財団にこのネットワーク形成の趣旨をご理解、評価をいただき採択となりました。 しかし、いざ、ネットワークの構築を呼びかけたときに、主として公のセクターから次のような意見をいただきました。 「このようなネットワークを構築する事業は公益性が高いゆえに、民間に担わせて良いのだろうか、公益性の高い仕事は官、もしくはNPOのような非営利な組織が担うべきだ。」 世の中を官とか民とかに分類するならば、株式会社を経営している私は明らかに「民」です。民間である私がつくろうとするネットワークは、自らの会社の利益を誘導する目的であるとの嫌疑をかけられました。 私は経営者としてこの疑惑を全面的に否定することはできません。しかし、自分の会社の利益にもなり、社会のためにもなるような立ち位置があるはずです。今は社会起業家という言葉もあります。民間も積極的に公益を担うべきだと考えています。公益を担うのに官も民もNPOもありません。 設立までに、さまざまな紆余曲折がありましたが、ネットワーク形成の趣意に同意いただく方々を集め、7月1日に「十勝農業イノベーションフォーラム」を立ち上げることができました。 【十勝農業イノベーションフォーラムのウェブサイト】http://t-afi.net |
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