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更新日:2008年8月18日(月)
特集

9月号 特集1 持続可能な道産品ブランド化計画−民間企業と生産者による3年ビジネスモデル(下)



山口真佐美  (株)北のお魚.net 代表

全体構成
<下>
(5) まずは行政依存体質からの脱却が必要
(6) 『誰が、いつ、どこで、どのように作って、どういう味がするのか』を伝える
(7) 一年を通してキーワードを伝えるためには
(8) 最後に

<下>

(5)まずは行政依存体質からの脱却が必要

 日本では今、道の駅などを核とした農水産品の直売所がたくさんできています。成功したところは年間に数億円(10億円を超えているところもあります)という売上を上げていますが、そういうところはたぶんその街の前か後ろに観光地があるか、大消費地があるはずです。また、マスコミなどの露出度も高いはずです。それは誰かが切り口を変えた情報をどんどん発信し、取材意欲をかき立てるからで、だまって話題になったわけではないでしょう。つまり何もない所でのんびりやっていては、ぼちぼちは売れますが絶対大ブレイクはしないのです。

 生産者が特産品の加工、販売、管理と兼任するには限界があります。「販売や加工はその分野の専門家が担当し、生産者はその分でさらに良い物を作ることに専念する」ことが理想の形だと考えています。「それは商社がやっていることですよね?」と言われたことがあります。そのとおりです。ただ、私が居た小さな町や村にも大手が買い付けに来ましたが、イニシャチブが向こう側にあったような気がしてならず、そこが引っかかりました。商談は対等の立場で行われなければいけないと思ったからです。

 最近知ったのですが、今回やろうとしていることは今年度から経済産業省と農林水産省が推進する『「農商工連携」促進等による地域経済活性化のための取組』と同じ考え方なのです。

 「顕著化する都市と地方の格差拡大に対応し、地域経済が自立的に発展するための基盤を整備する観点から、地域に根ざした農林水産業や商工業等の産業間の連携を促進することを通じて、地域経済の活性化を図ることを目的とした施策等について、農林水産省と経済産業省が連携し、検討・実地を進めます。」(平成19年11月6日経済産業省配布資料より抜粋)

 組織も大きく体力もネームバリューもあるところと勝負するわけではありませんが、スタートが少し早いのと小回りが利くという利点を生かして、どこまで成果を表すことができるか楽しみでもありますし、世の中がそういう流れになるのであれば、追い風が吹いて良い方向に進みそうだと、ひたすらポジティブに考えているところです。

 『農商工連携』に不可欠なのは、まず生産者との信頼関係を築くことですが、同じ場所に住んではいない『よそ者』であるため、これがなかなか難しいのです。特に名もない民間企業ですから、いよいよ怪しい者と思われても不思議はありません。これに関してはその地域の核となる方々にご協力いただきながら、関係を少しずつ築いている最中です。精神的、金銭的な負担(失敗した時の責任・開発にいたる経費等)も決して軽いものではありませんから、その部分のリスクの回避も必要です。助成金をいただいているとはいえ、資金が潤沢にあるわけではありません。足りない分は生産品を販売しながら補っていこうという、自転車操業的な要素も多々あります。そういうリスクがあるからこそ、気合も入るというものです。

(6)『誰が、いつ、どこで、どのように作って、どういう味がするのか』を伝える

 私は「インターネットほど便利なものはない」と思っています。諸問題が取りざたされており、それを否定することもしませんが、田舎にいながら都会と同じように情報収集や発信ができるツールとして、こんなに低コストで使い勝手の良いものはありません。特に規模の小さい、市場のロングテールに対応する商品の宣伝効果は絶大といえます。

 だからと言って、インターネットを使えばなんでも上手くいくわけではありません。商売の基本として(物なり人なりの)顔が見えることは重要です。食品偽装が大流行の昨今であれば、いよいよ顔が見えない商売は不利になります。『誰が、いつ、どこで、どのように作って、どういう味がするのか』これをきちんと伝えていく方法を考えなくてはいけません。

 『誰が、いつ、どこで、どのように作って』ここまでは、インターネットを使って十分にお伝えできます。問題は最後の『どういう味がするのか』です。これは実際に食べてもらわないことには、信じてもらえません。実際に食べてもらう場を作り、さらに情報を知りたい人のためのインターネット(サイト)と考えるのが基本でしょう。また、コアな顧客を作るためには消費者の頭の中に、キーワードをインプットしてもらう必要があります。

 テレビの通販番組を見ていて、ついつい買ってしまうことがあります。「わぁ〜安い!」と出演者なり観客なりが大きな声で言っても、購買意欲がわくことのない私ですが、深夜の外国製品の通販番組では購買意欲モリモリになることがあります。どうやら、しつこく繰り返し見せられた商品情報で、頭の中がいっぱいになったころに「今なら購入後5000円バックです!」などと言われると、「よし、買った!!」となってしまうようなのです。実に上手なマーケティング戦略です。勉強になります。

 予算の都合もありますし、あんなに大きなことはできませんが、たくさんの人が通勤、通学、お買い物などで行き来する場所で一日中商品名を連呼するのはどうだろうかと考えました。もちろん試食も出しますし、販売もしますがとにかくキーワードを伝え続けることを実践して、その反応を調べたいのです。かなりアナログで地道です。リサーチは地元である札幌の“大通地下街”と東京の“有楽町どさんこプラザ”で行い、結果は生産者と共有します。

(7)一年を通してキーワードを伝えるためには

 生鮮品の場合、旬というものがあります。一年を通して出荷できるものもありますが多くは旬のときが一番美味しく、価格も安く、量も豊富です。売れ筋商品の場合、旬が過ぎれば「売り切れました。また来年」と、公表するのも良い宣伝になりますが、まだ売れ筋商品ではないものであれば、生鮮品がない間でも加工品を販売し、消費者に忘れられないようにする必要があります。

 今回は後者を考えています。加工品はOEMで作ります。加工施設を管理運営しながら小ロットで物を作っていては利益が上がらないからです。加工品の販売はもちろんインターネットも使いますが、基本はこれまたアナログで地道な販売戦略を展開していきます。

(8)最後に

 3年間の事業の最大のイベントは、完成した加工品を持っての展示会への出展です。出展にはお金も労力もかかります。であれば、そこは一気に頂点を目指したほうがモチベーションも上がるというもの。目指しているのは世界62カ国・地域から2300社超の出展と、9万5千名を超える来場者が集うアジア最大級の食品・飲料トレードショー「FOODEX JAPAN」です。

 以前の仕事場は国立公園指定地域内にあり、地域活性化事業の中には観光施設運営というのもありました。地域の特産品だけでは商材が足りず、観光土産のようなものも随分仕入れていましたが、都心部から離れた小さな田舎町に住んでいると、情報がなかなか入ってきません。どうしても観光土産専門業者任せになるところがあり、その結果どこのお店に行っても同じものばかりという金太郎飴的展開になりがちでした。仕入れるにしても、独創的でその町のイメージに合った良いものを仕入れなければ、いつか共倒れになると思ったので、情報収集と商談のために年に2回、春と秋に東京お台場の国際展示場で開催される「ギフトショー」という、食品も含む雑貨の国際見本市に出かけていました。「ギフトショー」では、有名な大企業も大きなブースで出展しますが、無名の企業も多く出展しています。無名の企業でも商材さえ良ければ人は集まり、その企業が年々大きくなっていくのを見てきましたから、やり方次第で展示会は非常に効果的な販売促進ツールだと思っています。

 さてその「FOODEX JAPAN」ですが、昨年度までは札幌市が北洋銀行と連携し食産業振興事業として『北海道・札幌ブース』を構成し、統一看板設営、デザインブース設営などの支援もしていたのですが(出展料、旅費その他の経費は出展者負担)、平成20年度からは中国・台湾などでの商談会にシフトしたようで、年度事業計画から消えたのは残念なことです。これからは中国・ロシアに向けての輸出に力を入れるのは自然の流れなのかもしれませんが、単独ブースではやはりインパクトが弱く、スケールメリットを生かした展開をするために『北海道・札幌ブース』が復活することを願ってやみません。

 『民間企業と生産者による継続可能な特産品ブランド化計画』の一連の流れを実践する中で、新たな発見もあるでしょうし、新しい繋がりもできてくるでしょう。ポイントポイントで立ち止まり検証することも忘れてはいけません。この3年計画を実践することで作り上げたビジネスプランは、また新しい場所や作物にも応用できると考えています。

 サミットの影響もあり、今年は食料自給率とかフードマイレージという言葉をよく聞きます。今後は食料自給率を向上させてフードマイレージは下げる方向で動くのでしょうか? しかし輸入物の価格の低い食材に飛びついたのは一般消費者ですから、なるようにしてなったということでしょうし、フードマイレージにいたっては日本の流通がそうなっているのだから、これまた自ら招いたことで、流行のようにマスコミなどで扱われるのは、あまり愉快ではありません。しかしこの流行のキーワードによって、日本国民の一人ひとりが「これではいけない。」と食糧事情について、あるいは第一次産業について考えてくれる(かもしれない)というのは、生産者にとって大きな希望でもあるのです。

≪おわり≫









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