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更新日:2008年9月5日(金)
北国生活、それぞれの科学

第69回 全国唯一の地質に関する公設研究機関



藤本和徳 北海道立地質研究所 所長  

地質研究所の紹介 

 北海道立地質研究所は1950年に北海道商工部内に北海道地下資源調査所として発足しまして、まもなく60年を迎えます。当時の条例を見ますと、「地下資源の開発を図るため設置する。」と明記され、北海道の鉱業振興のために設置されました。
 その後、時代は大きく変革し、1999年に現在の名称に変更し、実態にそぐわない条例も変更しました。地下資源の開発以外に利用も研究対象とし、陸域に接する沿岸域も研究領域としたことと、国土の保全に関する研究にも取り組むことを条例上で明確にしました。

 現在の組織は4部からなり職員数は44名です。企画調整部は2007年6月から旧総務部の業務を引き継いでおり、1課1係と2科からなり、総務、予算、研究調整及び一部研究を担当しています。研究部は地質と係わりのある研究職員からなる3部で構成され、各部には3科を配置しています。陸域の地層・岩石を扱うのが地域地質部、陸域の地層・水を扱うのが環境地質部、沿岸域の地質・水を扱うのが海洋地学部です。

組織図
所長−副所長−
   −企画調整部−総務課−総務係
         −主任研究員−研究企画科
               −技術情報科
   −地域地質部−主任研究員−表層地質科
               −防災地質科
               −素材資源科
   −環境地質部−主任研究員−地域エネルギー科
               −水理地質科
               −環境工学科
   −海洋地学部−主任研究員−海洋地質科
               −海洋開発科
               −海洋環境科

 地質研究所の使命は、以下の3つに集約することができます。

(1)地質情報基盤を整備し、北海道の地質と結び付くあらゆる行為を支援する。
(2)地質災害の防止や被害軽減に結びつく研究を行い、安心・安全な北海道を創造する。
(3)資源の適正な開発利用と環境保全に関する研究を行い、環境に配慮した経済の発展が可能な社会を実現する。

北海道と地質研究所 

 全国公設試WWWサーバー(産業技術総合研究所ホームページ)によると、全国には、国立や独立行政法人以外の公設試験研究機関が368あります。このうち、都道府県立の機関(地方独立行政法人も含む)は90%です。
 分野別に見ると、農業系、ものづくり系、衛生・環境系が47都道府県すべてにあり、水産系、畜産系、林業系は45都道府県にあります。このような中で、地質に関する公設試験研究機関は、全国で道立地質研究所が唯一であります。唯一であるが故に、他の都府県に無いのだから北海道にもいらないのではという話題になることがあります。

 なぜ、北海道にだけ地質に関する研究機関が必要かを考えてみますと、それは面積が広いからと言えます。北海道が都道府県の中で面積が最も広いのは誰しも理解できることで、日本の面積の約1/5にあたります。2位の岩手県の約5倍、最も面積の狭い香川県の約42倍です。
 ここで、北海道を14支庁に分割し46の都府県と合わせた60地域と捉えて、面積の広い順に並べてみますと、1位は岩手県になりますが、ベスト10の中に、十勝、網走、上川の3支庁が入ってきます。支庁の中で面積が最も狭い檜山支庁より狭い面積の地域は、東京都、大阪府と香川県などの1都1府4県があります。

 もし、十勝支庁立地質研究所が必要かと問われたら、それは必要ないでしょう。それでは面積が広いから必要だということを、もう少し説明いたしましょう。
 2007年6月に東京都で温泉に付随する可燃性ガスによる爆発という非常に悲惨な事故が起きました。直後に、都道府県や市町村では、温泉付随ガスの状況について調査を始めました。北海道の場合、ガスが付随する温泉は全体の40%程度で、そのうち可燃性ガスであるメタンが多く付随するものは約1/3、すなわち、温泉全体の15%程度でメタンが多く付随しています。これは、地質研究所がこれまで行ってきた調査の結果を根拠にしているもので、更にそれらの分布についても把握しています。

 都府県で、管内にある温泉の性状を行政が把握しようとした場合、管内面積が狭く、また共通した性状を示すものの存在が予想されますことから、比較的容易と思われます。しかし、北海道の場合、内陸、海岸、平野、山岳など多様な地域があり、面積も広いことから行政が一括して把握することは困難と言えます。

 事故翌日、札幌市消防局は、札幌市内の温泉でメタンガスが付随するものとそうでないものの情報収集に地質研究所を訪れています。ちなみに、地質研究所の敷地内にある35℃の温泉を1分間に100リットル汲み上げますと、約30リットルのメタンガスが付随します。この他、道内の多くの温泉利用者からメタンガス付随の有無について問い合わせがあり、また、報道機関からは、道内で可燃性ガスが付随する温泉の分布に対する問い合わせが多数ありました。北海道においては、温泉の全体を把握している地質研究所だけが対応可能だったわけです。ここまで、温泉に限って述べてきましたが、道内全域の地下資源、地質環境、地質災害など地質に係わる現象全般について、総合的な判断、解釈、予測などができるのは道立地質研究所だけであります。

 農業系や水産系の試験研究機関も設置にあたっては、面積や地域性を考慮しますので、面積の広い北海道には拠点毎に、農業試験場が6箇所、水産試験場が5箇所あります。
 地質研究所が北海道に必要な理由は、北海道は周辺海域も含めて面積が広いこと、異なる性質の海に囲まれていること、変化に富んだ地質・地形であること等、大地と沿岸域に係わる事象が複雑であるため、地質を専門とする試験研究機関がなければ、広域的に捉え、かつ地域に密着した情報を収集・提供することができないからであります。

 地質研究所の研究は自然を相手にした地道な研究ではありますが、研究成果は、生活の向上や産業の発展並びに安全・安心な社会形成を支援するものであり、社会的な使命は極めて大きいと考えております。今後とも、研究成果の普及に努めるとともに研究要望を見極め、時代の要請に合致した研究を進めてまいります。

プロフィール:ふじもとかずのり。1952年生まれ、札幌市出身、昭和50年室蘭工業大学開発工学科卒業、同年北海道立地下資源調査所(現北海道立地質研究所)試すい科、同企画調整係長、同開発技術科長、同企画情報課長、同環境地質部長、平成19年6月同所長。専門領域:地熱・温泉の開発・利用。









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