更新日:2008年7月16日(水)
特集
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<全体構成> <下> (5)地道で自信をもった観光戦略を (6)富士山静岡空港、2009年開港 (7)そして、洞爺湖サミット後の北海道観光 <下> (5)地道で自信をもった観光戦略を 自然環境の資源として「北海道の湖沼」をお勧めしましたが、次に「人」のことです。 最近、旗揚げした「社団法人 北海道観光振興機構」という組織があります。北海道庁直轄から民間に移行した部分だけを見ると、民間の力を引き出しているように見えますが、役員名簿の一覧を見ますと、首を傾げたくなります。北海道の観光の今と将来を考えるとJAL、ANA勤務者で全国を転戦されて故郷にUターンした方々の中には、国内外に数多くのチャンネルを有する方も多く、積極的に活用すべきだと思います。また、当然、外国の航空会社もメンバーに入れた方がいいと思います。北海道に観光客を呼ぶことを本気で考えているなら、ここはもっと外に目を向けるべきです。今後、そうされると思いますが、できるだけ早い方がいいですね。とにかく、観光振興には関係者を引き込む、巻き込むような動きにしなければと思います。 このことで思い出すのは、私が九州に赴任していた課長時代ですが、福岡県や福岡市、大分県、熊本県などから頻繁に観光に関する検討会への呼び出しがあったものです。当時「アジア太平洋博覧会」(1989年3月〜9月開催。福岡市政施行100周年を記念して開催。マスコットデザインは手塚治虫。)が準備されていたのですが、私たちに課せられたのは、博覧会終了後の施設の活用についてのアイデア出しでした。 メンバーは老舗旅館のご主人、アメリカ文化センターの館長、僧侶などなど10名くらいで、1週間に1回集まって2時間以内で3ヶ月間議論をしました。毎週、座長が交代しながら、市役所の方は裏方に徹していました。しかも、時給千数百円というように必ず謝金もありました。これは金額の多寡ではありません。民間人の協力を仰ぐのですから、その分の補償をしようとするのは、ビジネスの上で大切なことです。 無料には無料に相応しいアイデアしか出てこないものです。「社団法人 北海道観光振興機構」の活動は、皆ボランティアだそうですが、これでは外部の知恵やエネルギーをどれだけ取り入れることができるのか、この点で北海道は人の使い方が素人すぎるように思います。 九州の行政のしたたかさは、外部の人を上手に活用するところにあります。検討作業が終わった時には、首長自らが感謝状を各委員に手渡します。私は何枚もらったことか、数え切れないほどです。一枚一枚の記憶は、何かの時には九州のことを応援しようという気になったり、昔の縁を大切にしようと思ったりするのは人間の自然な情だろうと思います。 私は北海道が勤務地のこともあります。しかし、北海道支店でも歴代、行政からお声がかかったことはただの一度もありませんでした。これは、私個人にということではなく、観光に関係する民間企業に対して行政サイドが積極的にヒアリングする姿勢をもっていなかったことの証だろうと思います。 (6)富士山静岡空港、2009年開港 昔の話をしているのではありません。実は私は富士山静岡空港(平成21年3月開港)の開港に向けてある会議の委員を半ば志願兵のようにして参加しています。それは私なりに北海道と静岡をつなげたいという狙いがあってのことです。静岡・千歳間の航路開設についてもいろいろと意見を申しあげてきています。それは、北海道が全国の工場に対して誘致活動をするにしても、空路があることは大変な強みになります。まして、製造業の歴史・規模を誇る東海地方との関係構築を考えるならば、今の段階から静岡県に協力しておくことが今後と人の繋がりでも生きてくるだろうという互恵の発想です。 ところが、次のような体験をしたものです。2年程前、静岡経済界の重鎮が北海道に空路開設にあたって協力を求めてやってきたことがあります。その時に対応した北海道は、誰だと思いますか? 一担当者です。それなりの方が対応をして、今後の人的つながりを大切にしよう、という気持ちが微塵もないことを静岡側は十分に理解したことでしょう。 最近、ANAは、静岡・札幌線の運航計画(静岡17:30発→札幌19:10/札幌9:40→静岡11:30)を発表しましたが、もちろんJALも就航することを発表しています。今後もこの路線に対してどのような需要を喚起していくのか、北海道も東海地区との結びつきを求めるならば、もっとこの路線に対して戦略的に積極的に協力すべきではないかと思います。 これに似た話では、神戸と沖縄の繋がりがあります。神戸空港が2006年に開港しましたが、神戸の人たちがかつて沖縄本土復帰10周年記念事業として兵庫県議員団が結成され1万人以上も沖縄に出かけたことがあります。これも開港前から入念な市民交流を積み重ねてきていたから実現できた動きでした。 ことほど左様に空港を基点にした人や物の往来には、時間をかけた取り組みが欠かせません。こうした息の長い取り組み無しには、観光立国という言葉は輝いてこないですし、人を惹き付けることもありませんし、観光客がリピーターになることもないでしょう。いつまで北海道観光の商売下手が続くのか、少々不安です。 (7)そして、洞爺湖サミット後の北海道観光 洞爺湖サミット(08年7月7日〜9日)が、転機になる可能性は低いと思います。沖縄サミットの翌年に9・11があって、沖縄観光は大打撃を受けるのですが、観光客の減少が地域経済に非常に大きく影響を与えていることを肌身に知った地元の人たちから、観光を大切にする気運が生まれたのです。具体的な例を出してみましょう。2000年(沖縄サミット)452万人の観光客が、2001年(9.11)443万人に減少。観光収入では、3792億円から3390億円で約400億円の減収です。この時に、沖縄の人たちは観光客を大事にしようという気持ちを共有したのだと思います。 さて、同じサミット会場になった北海道地域では、サミット開催期間の3日間のために道南地方の観光地を回る旅行は、宿泊施設の問題、交通規制の問題などがあってサミット前後はほとんど壊滅状態です。それにともなって温泉旅館なども休業状態になるでしょう。そこに食材を納品していた会社も同様の影響を受けるわけです。サミット特需のような一流ホテルも少しはありますが、地域全体を考えれば7月の利益は減少すると思います。 また、洞爺湖を含む道南エリアを得意とする観光バス会社は、一番の稼ぎシーズンを棒に振ることになりました。年間の4分の1を稼ぎ出す7月がダメとなった知人のバス会社は、約1億円の収入を失うだろうと見ています。気の毒な話です。道南がダメな分、道東で補うことはできません。 こうした実態を知ってから北海道観光を考えたいと思います。そうすれば、今までのように繰り返されてきた北海道観光の批判、あるいは自虐的な自己評価などにかまけている場合でないことが分かっていただけると思います。 「もてなし意識が低い」と識者の方々は口にされますが、いったい、どこの観光地でそうした接客があるのでしょうか。全道どこの観光業者も一所懸命に仕事をしています。愛想が悪いだの、気が利かないなどの、サービスが三流だという言葉を流行らせた人たちがいるのですが、それを言う前にホントウに北海道を良くしていこうとするならば、北海道の抱えている資源、北海道に住んでいる人たちの気持ちにこそ注目していってはどうでしょう。 例えて言えば、批判的な方たちは欠点を指摘することに熱心なのですが、それは、暑い日に『暑いね』と言っても少しも気温が下がらないのに似ています。行政の発表する観光戦略もその類いです。もっと具体的な行動をそれぞれが起こすことと、それを邪魔しないことが大事だと思います。 私が訪れた大阪堺市の会社は観光客を募集して全国各地に送りだす優良企業ですが、そうした会社を含めて市場の大きい関東圏の埼玉、茨城、千葉、神奈川さらに関西圏の京都、兵庫等などの旅行代理店には北海道の観光関係セクションの人が訪ねていった形跡はありません。つまり、観光キャンペーンも表層的なところで儀礼的な交流をして一仕事終えた気分なのです。 もっと現実の仕事をしている人たちとのネットワークをつくる努力が、北海道観光を元気にすると思います。そして、誰もが文句なしに認める「自然は一流」という北海道の中でも、今まで注目してこなかった北海道の「湖沼」と「農業」は、アジアの人にも、世界の人にも誇れる自然資産なのですから、焦点を絞った売り込みを2010年に駆け込むようにしてでも取り組んではいかがでしょうか。「農業」についても、旅行会社そのものが創業原点に「人流」「物流」を手がけてきたという史実のあることを思い起こすならば、北海道の一次産品である農産物、魚産物をもっと流通させることに熱心であっていいのです。上っ面の「おもてなし」が観光業の本質ではないのです。ここを忘れて講釈する研究者や業界人が多すぎます。安心・安全の北海道農業は、アジアのお手本になるだけの蓄積があることを誇って、物流をもっと研究すべきです。 ありがたいことに読売新聞(08年5月29日付)が「北海道観光 変革の時」「サミットから未来へ」と見開きで北海道観光を特集していただいていました。しかし、紙面で報じられている識者の方々のご発言には、疑問も多々ありました。今まで言われてきていた北海道観光への苦言の繰り返しと、ピントのずれた発言に感じられたからです。 「学者が学者でいられるのは、自分の理論を否定するデータを他の研究者より早く発見しようと努力する限りにおいてである。経営者が経営者でいられるのは、自社のビジネスモデルの限界に、市場の反応より先に気がつく限りにおいてである」(内田樹)という、最近評判の哲学者の文章ですが、北海道観光の素材としての「湖沼」と「農業」に着目して、「2010年問題」という市場が巻き起こすだろう動きを乗り越えてもらいたいと思っているところです。 私の意見が優れているなどとは思っていませんが、世情あふれている抽象的で自虐的な観光議論を見直す意味からもあえて「異見」を述べさせてもらいました。ご意見、ご批判をいただければ何よりです。洞爺湖サミットを契機にして北海道観光を今一度、前向き、具体的な産業形成のモデルにしたいと強く思っています。 (編集部より・筆者山崎氏の「崎」は「立」が本来ですが、フォーマットの関係上「崎」を使用) ≪おわり≫ |
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