更新日:2008年6月19日(木)
特集
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<下> (4)そのためにも財政現実を直視したい (5)外部からも認められる財政運営を行うことが必要 (6)地域の特徴・ポテンシャルを活かす (4)そのためにも財政現実を直視したい 産業振興を含め、必要な施策をしっかり実現していくためにも、全ての施策のベースとなる財政の状況を正確に把握しておくことは大切だと思います。 実は札幌市の税収については、全国と比較するとよく分かるのですが、大変脆弱な構造です。歳入全体に占める市税収入の割合について、平成18年度の政令指定都市(15団体)の決算で比較すると、札幌市は34.2%と第14位となっています。正に3割自治です。ちなみに、50%以上の市は、さいたま市(52.3%)、横浜市(51.4%)、川崎市(51.1%)、名古屋市(50.0%)の4市で、第15位は北九州市(31.2%)です。 その一方、地方交付税への依存度は、ずば抜けて高くなっています。平成18年度決算における地方交付税額は約1,131億円であり、歳入に占める割合は14.5%と依存度NO.1です。歳入に占める地方交付税の割合が2桁になっている団体は、ほかに神戸市(13.1%)、北九州市(12.1%)、京都市(11.6%)の3団体ありますが、額で1,000億円を超えている団体は札幌市だけです。これがないと、札幌市の仕事が動かないのです。 それと税収の中身を見ると、固定資産税が46.4%、個人市民税が30.4%、法人市民税が12.4%となっており、例えば大阪市や名古屋市などと比べると、法人市民税の割合が小さくなっています。法人市民税が占める割合が大きい団体では、景気の動向により、税収が左右されやすいわけで、景気が上向けば税収が自ずから増えることが期待できるわけですが、札幌市の場合、それもあまり期待できないというのが現実です。 支出面から札幌市の財政を見ますと、かなり堅実にやってきているのではないかと思います。平成22年に財政の厳しさのピークを迎えますが、これは、地方交付税の削減、扶助費や退職者増に伴う人件費の増等が主な原因で、特段に放漫な経営をしてきたというわけではありません。 公債費も平成22年にピークを迎える予定ですが、ここ数年、公債残高を着実に減らしてきており、近いうちに一般会計で1兆円を切りそうです。また企業会計と言われる病院とか地下鉄とか、上下水道などの方も1兆円くらいありましたが、これについては、今年度予算で既に1兆円を切りました。合計2兆円弱ということで、引き続き、削減を進める必要はありますが、公債費による財政負担の度合いを判断する実質公債費比率では、平成18年度決算ベースで14.5、政令市の中で4番目に健全な成績となるなど、必要な公共事業に絞り込んで実施してきたことの一つの証左になるのではないかと思います。 人件費の面でも、平成19年4月1日現在、人口10万人当たり一般行政職員数で385.2人と政令指定都市の中で最も少なくなっており、また、ラスパイレス指数(地方公務員の給料額と国家公務員のものを後者を100として比較したもの)でも、99.5と政令市で3番目に低くなっています。 このように、従来から、かなり堅実な財政運営を続けてきたと考えてはいますが、少子高齢化社会の一層の進展に伴い、扶助費の増加が不可避と予想されるなど、今後とも厳しい財政環境が続くことから、行政内部においても、より一歩踏み込んだ努力が必要です。 一方、歳入については、地方交付税の減額は、全国どこでもほぼ共通する苦しみですが、札幌市の場合は先ほど申しあげたように依存率が高い分、苦しみも大きいことになります。実際、20年度の予算においては、地方交付税の額が遂に1,000億円を切るものと見込んでいます。このように見てくると、冒頭述べたように、22年度のピークを過ぎたら、急激に楽になるかというと、残念ながら、そういうことにはなりそうもありません。実際、20年度予算編成後の新しい収支見通しでも、23年度で272億円、24年度で267億円の収支不足が見込まれます。しかし、それでもここを乗り越えていくことで、本当の意味で、持続可能な財政構造への転換を実現されていくのではないか、また、そうしなければならないと思っています。 (5)外部からも認められる財政運営を行うことが必要 さて、札幌の財政運営を外部から評価すると、どうなるのか。時代の変化に伴い、外部からの評価を今まで以上に意識する必要が出てきました。 先にIRの話をしましたが、地方債を巡っては、いわゆる格付けを取得する地方公共団体がかなり出てきました。地方公共団体には、民間における破産といったことは起こらないので、地方公共団体によって信用力に差があるのは本来的にはおかしな気もしますが、特に外国の投資家などは、格付けがないと安心して買えないようです。また、格付けを取得するためには、格付け会社に対して財務内容を分かりやすく説明する必要がありますので、そのような過程を通じて、結果的に財務の透明性が高まりますし、また自分達の財務状況を客観的に再認識できるといった良い面もあると思います。 札幌市はまだ格付けを取得していませんが、今後、本格的に検討する必要があると思っています。仮に、格付けを取得するとして、どのような評価を得られるか。これは、格付け会社が自治体のどこの部分を主に見るかによって変わるようです。札幌市の場合は自主財源が少ない分、地方交付税の比率が高く、この点で厳しい見方をされるかもしれませんが、過去の財政運営の堅実ぶりは信用を得ると思いますし、さらに新しい行財政改革プランを着実に実施すれば、その点も評価されると思います。 また、今秋には「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に沿った4つの健全化判断指標(実質赤字比率・連結実質赤字比率・実質公債比率・将来負担比率)も発表することとなりますが、先ほどご紹介した実質公債費比率も含め、「健全」の範囲内におさまりそうです。 さらに、来年の秋に予定されている新たな公会計制度の導入(新たな財務諸表の公開等)に向けて、現在準備を進めていますが、これを機会に、分かりやすい財務情報の提供と新たな財務分析に基づいた一層しっかりした財政運営に努めたいと思っています。 (6)地域の特徴・ポテンシャルを活かす ここまで、財政の話をしてきましたが、財政そのものは、行政のベースになるものではあっても、目的そのものではありません。行政の目的は、その地域の課題を可決することや地域を発展させることですが、その際には、地域の特徴・ポテンシャルを活かした取組を行うことが効果的だと思います。そして、地域が発展すれば、結果的に財政も豊かになると期待できます。そこで、最後に、札幌市や北海道のポテンシャルなど、こちらに来てから1年弱で感じたこと、考えたことをお話したいと思います。これらは、もちろん単なる私見です。読者の皆さんから、異論・反論をいただければ幸いです。 こちらの方に、自己分析をしてもらうと、「熱しやすく冷めやすい」とか「依存体質」とかいう答えが返ってくることが多々あります。でも、私はあまり信じられません。 例えば、モエレ沼公園。とっても素敵な公園で、何度か訪れましたが、そのたびにその雄大さや美しさに感激します。ご承知のとおり、大変な時間と手間をかけて作られた公園です。かなり頑固な人たちが関わらないと、あんな公園はできません。日本の他のどこの地域に、あのような公園があるでしょうか。また、依存体質などとはかけ離れています。それとは正反対に、見る者に新しい価値を真っ向から提案するものであり、フロンティア精神に溢れていると思います。私は、そこに北海道、札幌に住む人たちの長所としての頑固さがあるように見ています。と、言いますのも新しいことにトライする人は、ある種の頑固さが必要です。新しいことをするには、従来のものを破壊する作業も伴うでしょうから、八方美人では実現し難いものです。また、あの公園には、北海道らしい新しいことを好み、それを受け継いでいる地域性を感じます。 また、こちらに来て、特にいいと感じたこの土地の特徴は、「のんびり」していることです。私の個人の気質ということもあるでしょうが、私自身は、大阪人にありがちな自らのセッカチさを自覚しています。その私でも東京での生活ぶりは、人々がまちを歩いている光景を見るだけでも気ぜわしさを感じました。 ところが、札幌へ来てみると、そうしたギスギスした感じがなくて居心地の良さを感じます。この大らかさ、のんびり具合をマイナス評価する人もいますが、私はこの点は、絶対にプラスに評価すべきだと思います。札幌が観光地として評価されたり、また、魅力ある都市として評価されたりするのは、必ずしも評価するその人自身が意識していなくても、実は、この「のんびり」さが間違いなく一つの要因になっていると思っています。例えば、春の大通公園の噴水、花、風、それに思い思いにのんびりと時間をすごす人達の姿。まちのど真ん中に、こんなに穏やかな時が流れる空間を持つ都市が他にあるでしょうか。札幌の観光を他の都市における観光と差別化し続けるためには、この「都会的なのに、のんびり」というテイストを忘れてはならないような気がします。 さらに、私は今年初めて札幌の冬の生活を経験しましたが、一冬を越しただけでも、冬の厳しさを通じて住民相互の助け合いの精神や連帯感というものが自然に生まれているのだなと感じました。これは、雪の苦労を経験しない他地域とは違った強み・資産になると思います。作家の椎名誠さんが「たくさんありすぎると見えない物事がある。ネパールでは全天銀河なんて言って、毎日星空が見えるんですよ。でもネパール人はほとんど見ない。毎日、生まれた時から見てますから」(朝日新聞・道内版・08年5月18日付)とおっしゃっていますが、北海道で暮らすことによる連帯感も似たところがあるような気がします。 私は、このような札幌、北海道の持つ特徴・ポテンシャルは、これからの時代が抱えている様々な問題、例えば環境問題を解決する上でも、かなり有利に働くのではないかと思っています。 環境分野で平成20年度予算から新規事業として立ち上げたものに、「札幌・エネルギーecoプロジェクト」というものがあります。これは、国内で初めてとなる金融機関・エネルギー事業者との共同プロジェクトにより、住宅ローンと提携した支援など新たな融資・補助を行う制度です。例えば、市民の方が、住宅の新築やリフォームに併せて省エネ機器を設置する場合に、住宅ローンの金利優遇や機器導入助成を受けたりすることができます。また、中小企業者の方が、省エネ機器を購入・設置する場合に、それらの費用を無利子で借りることなども可能です。 環境の分野では、どうしても、工場など産業系セクターからの二酸化炭素排出量削減などに焦点が当たりがちですが、環境問題は、本当は我々一人一人の問題でもあります。もし、このプロジェクトなどを通じて、民間・住民セクターにおいて大きな成果を上げることができれば、大変素晴らしいことですし、それ自体が新たな価値の発信と言えると思います。札幌・北海道の人々が持つ連帯感や新しい価値を貫く頑固さが発揮されれば、札幌のまちが、のんびりと、しかし、着実に環境にやさしいまちになっていくのも、あながち夢ではないのではないかと思うのですが、どうでしょうか。 また、札幌のハンディとして、製造業の蓄積が薄いということが、よくあげられます。しかし、先に見たように、札幌市でなくとも、周りの地域に製造業が進出してくれれば、札幌市にも良い波及効果があります。また、例えば「スイーツ王国」の提唱や「スープカレー」の広がりなど、札幌の特徴である素晴らしい「素材」を生かし、他の地域にはない価値を発信している企業、人々も少なくないのですから、周りの地域との連携も視野に入れながら、こういった札幌らしい得意分野を伸ばして行くことが効果的なのではないかと思います。 開拓、あるいはフロンティアの気質は、実はあちこちに生き残っているし、それに札幌の人たちが持っている特徴・ポテンシャルが加われば、他にはない札幌らしい新しい価値をもっともっと提案できると、1年弱であっという間に札幌ファンになった私は信じています。 ≪おわり≫ |
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