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更新日:2008年6月19日(木)
特集

7月号:特集2 札幌市財政状態を知って始まる明日〜札幌市財政局長が語る。(上)



阿部知明 札幌市財政局長

■昨年7月に総務省から着任された阿部氏に全国地方自治体と比較しながら市の地域経営における「サイフ事情」と今後について語ってもらった。

プロフィール:1968年、大阪市生まれ。京都大学法学部卒業後、1980年自治省(現総務省)入省。国土庁計画調整局総務課、自治省税務局市町村税課、総務省自治行政局合併推進課、市町村課、公務員課などを経て、2007年7月より現職。その間、鳥取県、福岡県での地方勤務と在ヨルダン日本大使館での海外勤務も経験している。

全体構成
<上>
(1)平成22年度が財政の剣が峰
(2)その一方で地域生活の質を高める工夫
(3)将来へ向けて産業振興に力を注ぐ
<下>
(4)そのためにも財政現実を直視したい
(5)外部からも認められる財政運営を行うことが必要
(6)地域の特徴・ポテンシャルを活かす

(1)平成22年度が財政の剣が峰

 札幌市では、市の財政状況を家計にたとえて市民の皆さんに親しみやすい形で提供するため、平成15年から「さっぽろのおサイフ」というパンフレットを作成していますが、今年3月に発行した最新版の「おサイフ」9頁では、「見直していきます。お金の使い方、集め方」ということで、新たに「札幌市行財政改革プラン」の骨格をお伝えしています。(「おサイフ」の最新版を含め、様々な財政情報については、札幌市のHP http://www.city.sapporo.jp/zaisei/kohyo/ からダウンロードできます。)

 札幌市の財政状況、その構造の詳細についてはこの後に触れますが、札幌市でも、他の地方公共団体と同様、現在、非常に厳しい財政状況に直面しており、それを乗り切るため、昨年12月にとりまとめたのが、「札幌市行財政改革プラン」です。このプランの前提となったのは、昨年5月時点での収支見通しでした。それによると、このまま何も手を打たずにおくと、平成22年度には、増大する歳出が歳入を306億円も上回ってしまうことが予想されました。収支不足が一番拡大するこの22年度を乗り切ることが、札幌市の財政にとって待ったなしの大きな課題であり、それへの対応をまとめるためにプランを策定する必要があったわけです。

 財政状況が厳しくなる要因には、団塊世代の大量退職による人件費増大、公債費償還などがあります。このような事態に対処するため、「内部努力」で115億円、「事業の選択と集中」で20億円、「市民の皆さんに影響のあるもの」(サービス水準の見直しや受益者負担の適正化など)で56億円、「財産等の有効活用」で115億円の財政効果をあげることを目標にしています。言い換えますと、これらをしなければ、平成22年度には合計306億円の赤字を生み出します、ということです。
 その後、この行財政改革プランを踏まえながら、平成20年度の予算編成を行いました。市民の皆様にもいろいろとご負担をかけることになるのですから、まずは市役所内部でできることは率先してやるべきだということで、人件費の見直し等内部努力による見直しをできる限り前倒しすることとし、20年度予算では「内部努力」で84億円の効果をあげることを見込みました。その中には、後年度にも効果が及ぶものがありますので、平成20年度予算編成後の収支見通しでは、平成22年度の収支不足は273億円と若干改善しましたが、後ほど詳しく見るように税や地方交付税といった歳入については、今後とも楽観視できませんし、歳出も扶助費を中心に増大することが予想されますので、引き続き、苦しい状況であることには変わりがありません。

 昨今、街中に張られているポスターにお気付きでしょうか。「市有地を私有地に」と大きなキャッチコピーが目に飛び込んでくるようにデザインされています。これは、われわれの必死さの表現でもありますが、市の所有している土地で今後、公共的に使う見込みのないものについては、売却したいということです。抱えているだけで使途のない土地については、これを3年間で売って、また一方では、新たな用途に使う土地を購入する必要もありますから、差し引きで合計150億円くらいの収入を見込んでいます。

 購入された民間の方は、それを活用して新たな開発等を行うわけなので、新たなビジネスチャンスやまちづくりのきっかけになります。市とすれば、遊んでいる土地をお金に換えることができる上、民地になるわけですから固定資産税までいただくことが期待できます。さらに、自己負担のないまま市の収入が増加するということで、市民の皆さんにも良いわけです。このほか、市が積み立ててきている基金、いわば貯金ですが、これについても非常に厳しいこの時期を乗り切るために、有効に活用したいと考えています。

(2)その一方で地域生活の質を高める工夫

 緊縮財政の一方で、地域の将来への布石も打っております。
 平成20年度の予算では、平成19年度から平成22年度までの4年間のまちづくり実施計画である「第2次札幌新まちづくり計画」に盛り込まれた事業について、積極的に予算化した結果、平成20年度予算における新まちづくり計画事業費は、1,155億円となっています。特に、子育て、市民自治、経済活性化、環境などに力点をおき、さらに市民や企業の皆さんと連携・協働することで、効率的・効果的な展開が実現できるよう、意を配りました。

 一例をあげますと、市民の皆さんによる自主的なまちづくり活動を支援するため、「札幌市市民まちづくり活動促進条例」が今年の4月から施行されました。この条例に基づく新たな制度として、「さぽーとほっと基金」(札幌市市民まちづくり活動促進基金)が設置されましたが、これは、この基金に対して市民や事業者の方々から寄せられた寄付をもとに町内会、ボランティア団体、NPOなどの行う非営利で公益的なまちづくり活動に対する資金的支援を行うもので、地域力アップに資するとともに、まちづくり活動に直接的には参加できない市民や事業者の方々も、資金的支援を通じて、まちづくりの主体になっていただくことができるというものです。是非、市民・企業の皆さんからの支援をお願いしたいと思っています。

 財政状況を良くするための努力を市民の皆さんにお願いをする一方で、市長自らが東京に出向いて札幌市発行の市債を投資家に説明するIR(Investor Relations:投資家向け広報)活動なども積極的に展開しています。すでに、都市間競争が始まっていますから、地方債をより有利に売却するといった努力も不可欠です。
 IRの際には、札幌市の財政状況や行財政改革の取組を紹介するのはもちろんのこと、札幌市の長所や成長の見込みのある産業についての話など、今後の展望も含めてお話ししています。例えば、バイオやIT、観光分野における様々な事業や企業誘致の取組などです。昨年度は、さっぽろスイーツの宣伝などもしました。主に、証券・銀行・マスコミ等の方々が相手ですが、東京に住む彼らに札幌の洒落た楽しい最新情報を宣伝する良い機会でもあると考えています。

(3)将来へ向けて産業振興に力を注ぐ
 
 私の直接の担当ではありませんが、財源確保といった観点からは、産業振興に関心を持たざるを得ません。そこで、ここでは、IT分野について少しばかり思っていることを述べてみたいと思います。専門分野ではないので、的はずれなこともあろうかと思いますので、誤りや認識不足がありましたら、是非、読者の皆さんからご指摘・ご指導頂きたいと存じます。

 改めて言うまでもなく、IT産業は、以前から札幌の経済活動の特徴・強みと言われてきた分野であり、引き続き、その規模は拡大し続けています。そして、大雑把な見方は気をつけなければなりませんが、総じて札幌はIT系人材の層は厚いと思います。

 サッポロ・バレーが全国的にもて囃された時は過ぎたかもしれませんが、その遺伝子は、現在もIT産業に関わる人たちに潜在的に受け継がれていると思います。札幌市の職員の中にも、まだITが十分に認知されていない段階から、IT系の産業振興に力を注いだ人たちがいました。当時は「インターネットなどと、よく分からないことに取り組んでいる」と、少々(かなり?)異端児扱いされたのではないかと推測しますが、そうした先端を行く人たちが時代を拓いていくのは、いつの時代も変わりません。そのような人材が輩出されてきたことに、もっと胸を張っていいと思います。この点、札幌の人たちは、自らのことを保守的だと評価することが多いような気がしますが、あまり謙虚である必要はないと思います。

 ITの中でも、以前から「組込み系」が強いといったことが言われてきたようですが、地元の方々に聞くと、「そうでもないんですよ」みたいな遠慮がちな答えが返ってきます。けれども、苫小牧を始め札幌近隣への自動車関連企業の進出が盛んになるにつれ、車の電子制御システムなどのソフトウェア開発を行うためのエンジニアが必要となるわけで、実際、札幌圏域に携帯電話をはじめとする組込み系開発の経験者が多数存在することに目をつけて、札幌に進出して来た企業もあると聞いています。
 私は、福岡県で勤務したことがありますが、福岡では自動車産業は極めて重要な産業と位置づけられています。自動車産業は大変すそ野が広い産業であり、特に製造ラインが来れば、大変な波及効果があります。札幌にも、今まで以上に、自動車に組み込まれるソフトを開発する会社が進出したり、新たに地元から関連企業が立ち上がるのではないか。こうした動きを見逃してはいけないと思います。時代の趨勢としてIT産業は、これからも伸びていくでしょうし、近隣の地域と連携すれば、「サッポロ・バレー」で一時代を画した地域として、また、ITエンジニアの方々に都市の魅力を提供するまちとして、様々な夢が描けるのではないかと思います。

 大学との連携についても、もっと積極的になっていく必要があるのではないでしょうか。札幌に限定しないで札幌市周辺の大学も含めると、IT分野のみならず、大変豊富な知的資源があるわけです。これらの知と地元の中小企業が連携できれば、いろいろと面白い取り組みができるのではないかと思います。

 大学の知と言えば、最近、ITを活用した面白い北大発のベンチャー企業の方にお会いしました。病気の早期発見等にはCTなどによる画像診断が大変有効で、道内の地方病院にもかなりの「設備」は整っているようです。しかし、その画像から病気や症状を診断することができる画像診断専門医をそれぞれの病院で雇うことまでは困難です。そこで、地方病院で撮影した画像をインターネット等を通じて送ると、このベンチャー企業に登録した専門医が診断をしてくれるという仕組みだそうです。北海道の特徴である「土地が広い」「施設等が点在しがちである」というハンディをITでカバーする素晴らしいアイデアだと思います。でも、もしかしたら話は逆で、そのようなハンディがあったからこそ、このビジネスモデルが生み出されたのではないかとも思います。つまり、北海道の持つ「広い」「遠い」という特性とITというのはとっても相性が良いのではないかと。

 既に言い古された感もありますが、これからも日本企業が競争力を維持するためには、より付加価値の高い製品・サービスを提供していく必要があると思いますが、そのために重要になるのは、やはり人材です。IT一つとっても、かなり幅広い分野があるわけですから、札幌及びその近辺にどのような人材がいるのか把握した上で、その人材が活躍できる分野にある程度的を絞って施策を展開するとともに、そういった特徴のある地域であることを、もっと戦略的にコンセプトを打ち出すなどして、宣伝していく必要があるのではないかと思います。









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