更新日:2008年3月21日(金)
特集
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(8)公共財としての水資源マネジメントの提言 日本人独特の感性で水を「公共財」と捉えた伝統的な水利用の価値観は、今後の水資源マネジメントのあり方を考える上で、非常に示唆的である。国際社会や各国政府は、水資源を全ての人々に平等に分配する世界を目指す必要があり、以下の3点について提案したい。 1. 水は公共財であるという国際的コンセンサス「国連水憲章」を採択する 2.水を人権及び公共財と法律により位置づけ、遵守する枠組みを確立する 3.各地域において、地域特有の伝統的な水秩序と価値観を掘り起こす (9)水は公共財であるという国際的コンセンサス「国連水憲章」を採択する 水を平等に分配するためには、水が人類の共有の資産、財産であることを法律によって明確に定めることが不可欠である。国際的には、国際的コンセンサスの基に、国際的な水秩序を構築していく必要がある。その際は、特定の国益のみが反映されてはいけない。だからこそ、水を「経済財」と捉え市場経済の枠組みの中で議論を促す一部の国際機関や超国家的水企業が推進する「世界水フォーラム」とは別の枠組みでのリーダーシップが必要である。それは、法的拘束力を持つものであることが望ましい。 その意味から言えば、国連が最も適任である。国連は水分野を扱う機関が24機関ありながら、限定的な取り組みや機関間での調整に終始し、活動の主体が分散している。国連は、24機関を統轄すると同時に、水は人権であり、「公共財」であるとの国際的なコンセンサスをリードし、「国連水憲章」を採択すべきである。私たちは世界の青年たちと共に国連水憲章採択へ向けて、水を「基本的人権」及び「公共財」と謳った「世界青年水憲章」(Youth World Water Charter)を採択し、国連への働きかけを行っている。この憲章は、2003年3月に第3回世界水フォーラムで開催された「ユース世界水フォーラム」にて水問題に取り組む国際的な青年のネットワーク組織「Young Water Action Team」と「Youth Water Japan」によって採択された「Young People’s Declaration」を基に、NPO法人Waterscapeがイニシアチブを発揮し、2005年8月に、国際博覧会「愛・地球博」で開催された「ユース世界水フォーラム2005」の参加者を含む、途上国から先進国に至るまで50カ国を超える青年により作成された。 (10)水を人権及び公共財と法律により位置づけ、遵守する枠組みを確立する 南アフリカ共和国では、水利用の格差がアパルトヘイト時代による不平等の象徴であった。しかし、権利に基づく受給権の付与を通じてアパルトヘイトから受け継がれた人種的不平等の課題を克服して水利用の拡大を可能にした。1996年憲法(The 1996 Constitution)は「十分な食料と水への権利」を保証する権利章典を盛り込み、水供給計画(1997)及び水利法(1998)を制定し、国民に法的権利を与えた。 1日50−60リットルのきれいな水の全世帯への供給に加え、都市全ての世帯と地方の75%の世帯に十分な衛生を供給するための明確に規定された中期目標を確立し、全ての国民の水利用のためのライフライン関税及び、水使用量の多い者から使用量の少ない者への内部補助金を提供するための段階的関税を導入した。 また、政府は、ソーシャルミニマム(社会最低水準)を1日1人25リットルと定め、全ての人々への水の無償提供を決定した。目標は、2008年までに、水源から200メートル以上離れた世帯を失くし、全ての人々に必要最低限の水を無償で提供することである。これにより、1994年以降、水供給率が60%から86%へ上昇するとともに、3,100万人の人々に必要最低限の水の無償提供が普及している。 重要なことは、人権に関する法律が国民に水政策についての発言権を与え、これにより国民が期待感を持ち、自らの水の権利を意識するきっかけとなり、地域社会に水管理に対する政府への責任を追及させる監視機関としての役割をもたらしたことである。また、各国においては、水供給及び水資源管理の責任を明確に位置づけた大臣ポストの創出を目指すべきである(世界の多くの国において、水供給の責任は、副大臣クラスのポストにあることが多く、水資源管理における問題を大臣が扱うことはなかった)。 その上で、南アフリカのように、公平性と貧困層への利益を水資源管理戦略の最優先事項にし、ソーシャルミニマムのルール確立が必要である。水を人権及び「公共財」と憲法で定め、貧困層に配慮した水政策を生み出した南アフリカでの取り組みは、南アフリカ方式として、世界に広がっていくことが期待される。 (11)各地域において、地域特有の伝統的な水秩序と価値観を掘り起こす 日本には地域特有の気候や風土、歴史や文化などを色濃く反映させた伝統的な水秩序が存在すると同時に、今もそのような伝統的な水資源管理が残り、受け継がれている。水と関わる生活様式、利用や管理の手法は、多面的、多層的、多文化的な形で世界各地に根付いている。 したがって、水を「経済財」と捉えた欧州の指導的手法は必ずしも正しいわけではない。こうした地域の風土や文化に基づく地域的価値観を生かす考え方は、水問題のみならず、地球環境問題を考える上でも示唆的である。 水は、生命の源であり、地球人類の共有の財産である。世界の水辺を歩くと、湧水や井戸、川などの水の源に水神様が祀られている風景がある。現地の人たちに話を聞けば、「水は神からの贈りもの」であると教えてくれる。一神教も多神教も、ここでは関係ない。人類にとって「水は神からの贈りもの」なのである。水を司る神様が祀られている貴船神社(京都市)には、象徴的な言葉が残されている。「水恩感謝」、多様な水の恵みに感謝するという意味である。この言葉は、水の惑星を生きる私たちに大きなメッセージを伝えてくれている。 水に感謝しながら水と上手く付き合う知恵や工夫を取り込んだ伝統的な水利用と価値観に学び、現代生活に応用してくことが求められている。「水を使うことは汚すこと」、日々の節水を心がけ、汚す水の量をできるだけ少なくしていくことが重要である。近年、トイレや洗濯機など節水型製品も多数揃ってきているため、そうした製品を取り入れてくことも有効であろう。 また、多くの水を必要とする食べものの消費においては、残飯を出さない食生活を心がけ、国内の水で生産された食べ物を選択すること(地産地消)も節水へとつながる。国内の自給率を上げていくことは容易ではないが、こうした一人一人の地道な取り組みと同時に、日本の食糧基地として北海道の休耕田を有効活用していく発想も求められる。それでも外国の食べものに依存する場合は、水不足の進む輸出国の生産地(水源地)に対し水環境整備への基金をつくるなど水源税のような構想力が必要になってくるだろう。 (12)おわりに 今後も、世界中の水空間(ウォータースケープ)を歩き、現地の人たちと交流しながら、各地域で伝統的に息づく水利用、水資源管理の知恵や工夫を調査、研究していく。同時に、水は「公共財」であるとの国際的なコンセンサスである「国連水憲章」が採択されるよう、引き続き世界の水問題に取り組む仲間たちと連携しながら、国連や国際社会に対し、働きかけを行っていく。全ての人々への平等な水供給が保障される世界が実現されるよう、研究と実践活動の両面で、人生をかけて取り組んでいきたい。 本稿が一人一人の具体的な水へのアクション(WaterAction!)への呼び水となれば幸いである。 筆者プロフィール のだ たけひと:1981年岐阜県関市生まれ。清流長良川の水で育ち、水環境に関心を持つ。99年大学入学時に国際青年環境NGO「SAGE」を共同設立。01年 NPO法人世界水フォーラム市民ネットワーク、Youth Water Japanを設立。02年 大学を休学し、政府系組織「第3回世界水フォーラム事務局」チーフを兼任し、第3回世界水フォーラムの公式分科会「ユース世界水フォーラム」の最高責任者を務めた。オランダ皇太子ら世界のリーダーと50ヵ国1,500人の若者を集めた「ユース世界水フォーラム」で第6回日本水大賞 国際貢献賞受賞。地方自治体の水環境審議会委員や大手企業の水・CSRに関するアドバイザーを務め、国連会議や世界水フォーラムなどの国際会議に日本の若者を代表して参加している。早稲田大学大学院公共経営研究科在籍。 NPO法人Waterscape http://http://www.waterscape.or.jp 野田岳仁Blog http://waterscape.exblog.jp ≪おわり≫ |
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