更新日:2008年2月18日(月)
特集
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束原文郎 札幌大学講師・スポーツマネジメント研究室 全体構成 (下)(4)他都市でのスポーツ振興を参考にすれば (5)スポーツ人口の広がりから「食育」まで (6)3次産業の中のスポーツビジネス |
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| (4)他都市でのスポーツ振興を参考にすれば 束原:アルビレックス新潟がそうした動き方をしていますね。あのチームの成功は、80万都市(新潟市)という中堅地方都市でもプロスポーツが成り立つことを証明したことで鮮烈な事例になっています。 運営会社は別々ですが、アルビレックスという名称を統一的に使って、バスケットボール(新潟アルビレックスBB)、スキー、スノーボード(チームアルビレックス新潟)、陸上競技(新潟アルビレックスランニングクラブ)、野球(新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ)などが立ち上げられていて総合スポーツクラブが志向されている点は大いに参考になると思います。 児玉:企業スポーツでは、一部の人だけがスポーツに取り組むような状態で、一般の社員にとって自分のものとして受け止められないでしょうし、発展にも限界があります。 学校、企業の周辺にスポーツのできる施設があれば、生涯スポーツの楽しみ方もハードルが低くなるでしょう。例えば国レベルで「スポーツ省」という組織があれば、より統一的なスポーツ環境を作り上げることもできます。 道庁を例にしますと、環境生活部と北海道教育委員会がスポーツ系の窓口になっていますが、これは国の厚生労働省、文部科学省という縦割り組織と相似形です。両者の間での情報交換が少ないのも残念ですが、行政の立ち遅れを感じさせます。 束原:自治体の財政も逼迫する中、行政に頼らないクラブ作りが求められるということかもしれませんが、どの道スポーツチームを企業1社で支えることは、どの競技についても厳しい環境にあります。7月にスポーツ産業学会を弊学(札幌大学)で開催しますが、そのシンポジウムのテーマとして「企業スポーツの新しい形」をあげています。 プロ選手といっても雇用の安定しない中では、個人の能力をいかんなく発揮することは難しい、そこで中京圏では1社が1人を雇用し、各社が退社時間を揃えるなどの配慮のもとチームを維持する試みが行われています。一つの知恵だと思います。 札幌、仙台、新潟と北方圏と言える地域に複数のプロスポーツチームが共存していることからも、今後もそれぞれの地域のスポーツ文化が定着し、発展するためにより多くの知恵(情報)の交換が大事になってくるでしょう。 児玉:残念な例ですが、雪印乳業グループが不祥事を起こした時に、同社のアイスホッケーチームが使っていたスケートリンクを手放しました。その結果、選手たちも北海道を去っていってしまった現実を考えますと、施設の存在は大きいものがあります。施設も大変な努力があって維持されていることを失ってみて分かる、という一例です。 (5)スポーツ人口の広がりから「食育」まで 束原:北方圏での室内競技でサッカーと関係の強いフットサルの振興も欠かせないように思います。わが国で最初に室内にサッカーを持ち込んだのが札幌大学であるから言うわけではありませんけれど(当時はサロン・フットボールと呼んでいました)、世界の有名サッカー選手の中にはフットサルの出身者も少なくありません。ユースの育成と同時にフットサルへの取り組みも、冬期間は屋外でプレーできない選手にとっては技術を磨く極めて貴重な機会になります。道サッカー文化のさらなる昇華には、昨年発足したわが国のプロ・フットサル・リーグ「Fリーグ」に北海道のチームをエントリーさせる必要がありそうですね。 児玉:Fリーグ(日本フットサルリーグ)は旭川などでも盛んで、北海道は競技人口も多いように思います。トサルの「コンサドーレカップ」(主催・北海道サッカー協会、北海道フットサル連盟。協力「竃k海道フットボールクラブ」。08年1月12日〜14日)は、今年、14カテゴリーに517チーム、選手の数にして6000人が参加して、関係者3万人が観客としてスタンドを埋める大きな大会でした。 束原:私のところのゼミ生も参加していました。北海道の草野球人口は、東京についで多いと言われるくらいですから、広い道内で移動に経費をかけながらもそれらを楽しんでいる人が既にたくさんいらっしゃるはずです。これは、道民のスポーツに対する需要、関心、行動力が潜在的に大きいことを意味していませんか? 児玉:そうだと思います。ただし、それに応えるだけの体制が整っていません。東京などではテニスコートをフットサル用に転換してビジネスが成り立ってきています。 私たちはプールに人工芝を敷き詰めて低学年の子どもたちがそこでフットサルを楽しめるようにして環境を整えています。今年はもっとフットサルへの働きかけを強めようと思っています。 それから喫緊の課題では、Lリーグ(日本女子サッカーリーグ)のこともあります。「コンサドーレ札幌」も小学校までは、サッカー教室で女子を教えているのですが、中学校に行くと、その子どもたちは行くところがないのです。高校、大学に行くとあるのですが、いかんせん、一番大事なゴールデンエイジの中学が抜けてしまうのです。これでは、なかなか選手も育たないということになります。 束原:総合型地域スポーツクラブを振興することも大事ですが、わが国のスポーツ振興にとってはまだまだ「学校」という仕組みが重要なようですね。学校としても盛んにスポーツを取り込む動きを見せているのではないでしょうか。 スポーツ専門学校も増えてきていますが、スポーツ周辺の学問も多岐にわたってきています。スポーツ医学に始まって、スポーツ栄養学、スポーツ心理学などなど、人間理解のための新しいアプローチが進んできています。 児玉:関連して言いますと、U15のチームは、藤女子大学の先生に協力いただいて「食育」に取り組んでいます。運動量と必要な食事を調査しています。今年で5年目になりますが、中学生、高校生の食事問題があぶりだされています。 道内の地方のある町での子どもたちの血液検査の報告があります。結果は2割が生活習慣病になっているということでした。地方の子どもたちは田園風景の中、走りまわっているだろうというのは、大人たちの思い込みでしかありません。自転車通学は危ないというので止めさせたり、近くの買い物にも親が車を使うなどして、都市の子どもよりも運動量が少ないという結果も出ています。 束原:食育に力を入れることはいいことだと思います。規則正しい食事はアスリートの基本条件です。弊学の学生アスリートでも一人暮らしを始めるととたんに朝食を抜くような選手も多いのですが、これは身体能力のみならず思考力も判断力も低下させてしまいます。 繰り返しますが、自分で自分の心身を管理できるのが良きアスリートへの道です。これが出来ないとアスリートの体に作り変えることも不可能ですから、大成するのは難しい。東京に比べて、そういった意識をもった学生が北海道には少ない印象をもっています。 これは北海道の教育、教育を支える経済・文化の構造、社会のすべてが絡み合って醸成された精神風土も背景にあるように思います。 児玉:うちでもU18の選手で寮生活をしている者と、自宅から通ってくる者とでは、しっかり栄養管理されている寮の選手の方が、体格でも体力でも優れてくる傾向があります。栄養管理というのは、本当に大事なことです。 学校給食はしっかりと管理されていますが、夕食が塾などのこともあって不定期でしかもカップ麺のようなもので済ませていると体に相当にダメージを与えていることになるだろうと思います。 束原:最初に触れたインカレに行っても体格差を感じてきました。私自身、大学4年間で筋肉を鍛え作るというトレーニングで10kgの体重変化を経験しました。これは、食べるものを食べて、トレーニングを続けるという能力ですが、優れた体格を持つ選手が本州に流れてしまうという人材流出問題と合わさった結果、顕著な体格差として現われてきているように思います。 (6)3次産業の中のスポーツビジネス 束原:最後になりますが、プロスポーツチームを経営される立場から、今後のマーケットをどのように捉えていらっしゃいますか? 児玉:現段階の日本でビジネスとしてプロスポーツで成功しているのは、ごく少数のチームだけだろうと見ています。圧倒的に多くのチームが、道半ばというよりもまだ、ビジネスとしてほんの数歩歩み始めたくらいと思っています。 今は黎明期かと思います。それだけに今後はスポーツチームが媒体力としての強みを発揮する場面が増えてくるでしょうし、ビジネスとしても有望な分野になるでしょう。 プロスポーツを頂点として、いろいろな分野でチームと連動しながらの動きが出てくるように思います。1次産業、2次産業、3次産業という産業構造の中で、スポーツ産業は3次産業の中でこれから規模を拡大していくことになると思います。 Jリーグもそうですが、欧州の名門チームでも経営的には苦労しています。100年を超える運営の歴史をもっている諸外国でも大変なのですから、誕生して10年少しでは、まだまだ運営のノウハウを蓄積してきたことにはなりません。しかし、そうはいっても過去の負債もありますので、多くの方に理解をいただきながら、このビジネスを北海道からも成功モデルにするよう努力していく覚悟です。 束原:選手の中から、コンサドーレに「愛着」をもった「人材」が育ってくることでチームの存在感そのものも高まるでしょうし、ここから日本代表、さらに世界の強豪チームになっていく道筋をこの北海道からもつけていただきたいと思います。 児玉:コンサドーレ育ちの日本代表選手などが出てきていますので、土台は今まで以上にしっかりしたものになってきていると思います。 年俸が480万円以下に決められているC級の選手が育ってきて、主力選手になっていくことは、コストパフォーマンスで言いますと、経営的に余裕が出てきます。そうした育成型のチーム作りが、はっきりしてきましたので、経営を安定させるまでに時間は要するでしょうけれど、見通しは明るいものがあります。 当初はやむを得なかった面もありますが、高額の外国選手を入れたりしたのにも関わらず、必ずしも戦績と一致しなかった現実からから学んできたことも大きいと言えます。 束原:今後、スポーツ産業の広がりと奥深さは、経済的な面だけで注目されるのではなく、人々のライフスタイルそのものと密接に繋がってくるものと思います。 北海道への販路拡大を考える道外の企業にもスポンサーになっていただくような努力も考えられるのではないかと思います。札幌よりも人口規模の小さい仙台、新潟でも元気にプロチームが活動しているのですから、札幌でできないはずがないと思います。 微力ではありますが、大学の研究室として「コンサドーレ札幌」のためには、観客調査やマーケティング調査などの協力も惜しみません。インカレを経験した限りでは、目に見えないところで大学とJリーグの提携が進んでいるように感じられました。地域で協力していい選手を確保する試みでしょう。当地でも本州への人材流出を防ぐため、大学でできることがあればお手伝いをさせていただきます。 児玉:最後にエピソード的な話題ですが、厚生労働省の支援によって取り組んだものがあります。「Jリーグ介護予防事業」です。札幌は「シニア健康増進運動教室」として、札幌ドームをベースにしてストレッチ、ノルディックウオーキング、ボール運動などを行うものでしたが、大変に好評でした。全道5会場で「シニア健康増進運動啓発活動」として運動の機会を設けております。 行政でも介護予防センターなどで、そうした取り組みもなされていますが、コンサドーレ札幌のブランド力を利用する方法もあります。 束原:スポーツは人が社会的・文化的に生きる上で、重要なツールだと思います。今日はサッカーに絞ってお話をさせてもらいましたが、サッカーを通して社会の問題に取り組むというのは「Jリーグ百年構想」などでも強調されていますし、Jリーグ規約では、選手による社会貢献活動を義務化しています。 実社会にスポーツが貢献できることは無数にあるように思いますが、そのモデルが「コンサドーレ札幌」から力強く発信されることを願っています。ありがとうございました。 児玉:情報化社会が進化する過程でさまざまな場面で人間が直面する新しい諸問題解決にスポーツが果たす役割が極めて大きなものになると考えています。J1での「コンサドーレ札幌」への声援ともども、どうか今後とも北海道のスポーツ文化振興に向けてご協力をよろしくお願いいたします。 ≪おわり≫ |
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