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更新日:2008年2月19日(火)
特集

特集2 「コンサドーレ札幌」を通してスポーツ文化の振興を(上) 



児玉芳明 (株)北海道フットボールクラブ代表取締役
束原文郎 札幌大学講師・スポーツマネジメント研究室



児玉芳明氏
束原文郎氏


◆ Jリーグの公式ニュースレター(143号/2007.12.26号)一面は、「鹿島が6年ぶり5度目のJ1優勝」と大きく報じる下に「J2では札幌がタイトルを獲得、東京VとともにJ1昇格。J1・J2入れ替え戦は京都が勝利」と続く。札幌市民に限らず北海道民にとっても記念すべきニュースレターである。
 その「コンサドーレ札幌」を運営する会社「(株)北海道フットボールクラブ」の児玉社長にプロスポーツチームの社会的な役割などをスポーツマネジメントの研究者でもある札幌大学講師の束原文郎氏がインタビューする。

全体構成
(上)  (1)インタビュー前
     (2)J1復帰のコンサドーレ札幌が教えたもの
     (3)スポーツ文化の広がり
(下)  (4)他都市でのスポーツ振興を参考にすれば
     (5)スポーツ人口の広がりから「食育」まで
     (6)3次産業の中のスポーツビジネス

(1)インタビュー前

◆ 札幌ドームが冬の青空に映える午前、児玉社長を訪問した。
 玄関を入って階段を上がると、右手に「(株)北海道日本ハムファイターズ」、左手に「(株)北海道フットボールクラブ」とプロスポーツの運営会社がお向かい同士。
 昨年(2007年)にバスケットボールのプロチーム「レラカムイ北海道」(運営会社「ファンタジア・エンタテインメント」)も誕生しているので、札幌はサッカー、野球、バスケットの3つのプロスポーツを楽しめる街になった。仙台も札幌同様に地方都市ながら3種類のプロスポーツチームがある(サッカーJ2のベガルタ仙台、野球の東北楽天、バスケットの「bjリーグ」所属の仙台89ERS=エイティナイナーズ)。
 このインタビュー前日に行われた「北海道スポーツネットワーク」(代表・河西邦人札幌学院大教授)主催の道内プロスポーツ3社長そろい踏みの公開座談会に参加した束原氏は、仙台の事情にも明るく、前日の座談会の話も踏まえて児玉社長にいくつかの質問と意見の交換をしてもらった。(編集部)

(2)J1復帰のコンサドーレ札幌が教えたもの

束原:「J1」への復帰、おめでとうございます。
 朝日新聞の取材でもお話されていますように、「だいたい成績と選手の人件費は比例する。だから、戦力的にはJ2の中では6位か7位くらいだと思っていた。優勝の大きな理由は、三浦監督の指導力と選手たちの結集力だ」(08−1−16付・道内面)という経営サイドの言葉は、昨年の選手年俸を一律25%カットという背景を考えますと、関係者の方々の大変な努力と熱意を語りつくした社長コメントと拝読いたしました。
 私の所属する札幌大学のサッカー部は、昨年12月にインターカレッジで明治大学(関東1位)、中京大学(中京2位)、宮崎産業経営大学(九州3位)と熱戦を繰り広げましたが、結果は残念なものでした。課題もそこから多々見つけることができましたが、これは北海道勢がぶつかる「壁」という言い方もできます。しかし、コンサドーレ札幌に学ぶならこの分厚い「壁」も、工夫しながら押せば開く「扉」と捉えた方が適切かと思います。

児玉:ありがとうございます。ここ数年のJ2での成績は、12位、6位、6位と続いてきて、目立った補強もなかったのに優勝できたことは、正直、予想を超える嬉しい結果であります。しかし、内部を細かに見ていきますと、若手を育成するチームとしての土台が整ってきているということができます。昨年の最終戦には、ベンチ入りした16人の選手のうち札幌ユース出身選手が3名も入っているのです。
 コンサドーレ札幌の育成活動として、「U−18」「U−15」「U−15旭川」「U−12」のメニューがあります。ここから育ってくる選手が北海道に残って活躍するならば、そのまま「コンサドーレ札幌」選手層の厚みになっていきます。同時に地域密着を唱える私たちの具体的な成果ということもできます。
 因みに昨年の「第31回全日本少年サッカー大会」では、わが「コンサドーレ札幌」チームは、16チームでの決勝トーナメントに出場して優勝したヴェルディ(東京都)に惜敗しております。

束原:北海道のサッカーレベルは、「コンサドーレ札幌」が牽引するようにしてずいぶんと高くなってきています。特に最近の日本代表には山瀬や播戸、今野といったコンサ出身の岡田チルドレンたちがエントリーしました。
 ただ、足下では小学生、中学生、高校生とサッカーに親しんできた若きエースたちが、高校卒業(プロ・大学)の段階で道外に流出するような事態が起こっています。野球などを例にすると分かりやすいのですが、北海道外から強豪といわれる高校に野球少年たちが入学してきています。サッカーでも道内の大学がそうしたポジションに立ちたいところです。それには、長期的な戦略に基づいた取り組みが欠かせないでしょうし、その素地には地域にスポーツ文化が溶け込んでいなければならないだろうと思います。

児玉:その通りです。昔の話になりますが、私たちがプロスポーツを楽しむと言えば、野球で巨人が札幌の円山球場に来る時に限られていたものです。なかなか手に入らない入場券は、プラチナチケット扱いでした。
 それが今や北海道日本ハムファイターズの活躍でプロ野球もずいぶんと身近なものになりました。現在では札幌でも見たいスポーツが選べる環境になってきました。観客として観戦するスポーツを選ぶことができるのは時代の大きな変化です。そして、スポーツの種目によって観戦の仕方も、参加の仕方も、応援の仕方もそれぞれ違うことも分かりました。

(3)スポーツ文化の広がり

束原:お金を払ってスポーツを観戦する文化が「コンサドーレ札幌」の誕生以来、北海道民にとってもプロスポーツの楽しみ方として定着してきたのでしょうね。
 われわれスポーツ科学にかかわる者は、スポーツの楽しみ方を「する楽しみ」「観る楽しみ」「支える楽しみ」「学ぶ楽しみ」「極める楽しみ」と分けますが、地域にプロスポーツが誕生することで、まず多くの人は「観る楽しみ」の機会を得たわけです。コンサドーレは他にどんな楽しみ方を地域に提供しているのでしょうか。

児玉:「支える」という点で、「コンサドーレ札幌」のCVS(コンサドーレ・ボランティア・スタッフ)の存在は象徴的です。現在、登録されている方々は302名ですが、試合開催にあたって入場の整理、入場券の切符切りなどなど、本当に裏方に徹して協力いただいております。しかも、無報酬です。お弁当、お水はこちらで用意させてもらっていますが、交通費も自己負担で「コンサドーレ札幌」を支えてくれているのです。
 誰よりも「コンサドーレ札幌」の試合を観たい方々でしょうに、それは観客の歓声で試合展開を想像するようなことで我慢していただいています。それでも、チームを応援して下さるのですから、「コンサドーレ札幌」を中心核にした人々の繋がりが、十年近くの時間を重ねて育てられてきたのだと思います。これは、都市化とともに地域共同体の解体が言われて久しいのですが、スポーツを通じて新しい共同体が生まれている証だと感じています。この人たちの結びつきや存在は、地域の宝でもあります。

束原:なるほど。そのようなスポーツを「支える楽しみ」が文化として広がっていけば、札幌のプロスポーツの未来も明るいですね。一方で、「する楽しみ」についてですが、本学の学生に対して体育の履修傾向をアンケート調査してみた結果、スポーツに対する関心が必ずしも高くない、と解釈され得るものでした。
 スポーツに対する思い出なり、スポーツを通じた楽しみが身体に記憶されていないのかも知れません。一因には学校体育でしかスポーツに接していない子どもたちにとっては、スポーツの本当の「する楽しみ」を体験していない可能性があります。多様なスポーツがあり、関わり方の多様な選択肢がある北海道でそうだとしたら、非常に残念ですね。

児玉:反対にスポーツのもっている魅力を一度味わった人たちは、生涯を通じて楽しむ傾向がありますね。
 ドームやスタジアムでの応援風景も多様ですが、そこに来られた方々は日常生活の中でも観戦、応援だけでなく、自らもスポーツに興じている方々も少なくありません。サッカーについて言えば各地に「四十雀」(しじゅうからリーグ・40代)や「五十雀」(ごじゅうからリーグ・50代)などがあり、中高年が楽しんでいます。もっと高齢の方々で70代のチームを作ってプレーしている人たちもいらっしゃいます。
 スポーツ文化はそうした形でも底辺を広げていくのだと思います。これはサッカーの例でしたが、北海道は野球での「朝野球」チームも多いのが特徴です。また、北海道はバスケット人口も多い地域です。今後もサッカー、野球、バスケットなどが複合的にスポーツ人口を増やしくようになればと思います。

束原:児玉さんはスポーツ人口の裾野を広げる地道な活動をされていますが、そうした息の長い活動は一種の種まき作業であり、10年後、15年後の収穫に通じていくように思います。

児玉:先日、北海道アイスホッケー連盟から、次のような話がきました。北欧などのアイスホッケーチームの運営は、みんなサッカーチームが行っているのだそうです。ですから、北海道においては北海道フットボールクラブがアイスホッケーチームの世話をしては? ということです。私どもに力がついてきたらそうしたことも出来るのだろうと思います。




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