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HOME > 続・柏艪舎の香り風 > 第26回 自費出版の常識
更新日:2008年1月9日(水)
続・柏艪舎の香り風

第26回 自費出版の常識



山本哲平 柏艪舎・制作部

 以前、同じコラム内で自費出版に関して書かせていただいた。今回もテーマは同じである。
 自費出版について知っている人も多いだろうが、一応説明をさせていただきたい。出版社が自社の企画として出版する本を『企画出版』、もしくは『通常出版』という。

 それに対して、著者が自費で本を作成するのが『自費出版』や『個人出版』と呼ばれるものだ。自分のお金で作るのだから、基本的に自分の作りたいように作ることができる。また、個人ではなかなか難しいが、出版社によっては書店に流通させることも可能だ。基本的には、自伝や詩集のような記念本を作る人が多い。

 そして、企画出版と自費出版の間に、『共同出版・協力出版』という出版形態が存在する。共同出版は、本の制作に関する費用と書店への流通費用、倉庫保管料、広告費などを出版社と著者で分担するというもので、書店への流通が約束されるぶん、著者にとっては魅力がある。
 自費出版をメインの事業にしている会社は、それこそ鵜の目鷹の目で新たな顧客を探している。そこに団塊の世代の大量定年の始まりである。仕事から離れ、自己表現の場を執筆に求める人は多く、自費出版会社にとってこれほど美味しいターゲットはない。
 
 さて、ここからが本題なのだが、昨年(二〇〇七年)新聞などでも大きく取り上げられた自費出版・共同出版の詐欺疑惑の記事をご存知だろうか? 疑惑自体は数年前から上がっていたが、マスコミ各社によって大きく報じられ、ようやく多くの人が知ることになった。
 昨年七月には業界最大手の自費出版会社相手に訴訟も起こり、十一月には国民生活センターが記者会見を行ない、自費出版トラブルに関して警鐘を鳴らすという異例の事態となった。
 訴訟の内容は、「出版された書籍は全国各地の書店で販売される」と広告で謳われているにもかかわらず、全国でたった数十部しか店頭におかれていないという実態に対して、著者が出版社を告発したものである。
 
 中立の立場で考えれば、この出版社の広告文は『出版された書籍は、全国各地の書店で販売する体制を整えている』であり、確かに全ての書店で販売されると書いているわけではない。だが、あえて勘違いを誘発するような謳い文句であると言えるだろう。
 この訴訟とは別の話だが、他にもインターネット上には様々な自費出版詐欺に関するページが存在している。

 一例を挙げてみよう。訴訟が起こったのと同じ出版社で絵本を共同出版した人のブログからである。
 この人が共同出版にいたった経緯はこうだ。新聞で同社が行なっているコンテストの広告を目にし、読んでもらえるだけでもありがたい、と考えて応募した。すると、「一次審査を通過しました」、「二次審査を通過しました」との連絡があったが、しばらくして「最終審査落選」の通知が届いた。しかし、その落選通知書には担当者のメッセージが添えられていたのだ。「今回は惜しくも賞を逃しましたが、ぜひ共同出版という形で弊社から世にお出しして頂けないでしょうか?」と。

 細かい部分は省くが、この方は約一五〇万円を支払い、本を共同出版することになった。その際に著者が一番心を動かされた言葉が、営業担当者の「全国の好きな書店に並べることができる」というものだった。結果を言うまでもないが、これはまったくの嘘であった。著者自身で各地のツテを頼り書店を調べたところ、数店に数冊あるだけだったというのだ。
 書店に自分の本を並べたいと願う人にとって、希望の書店に並べることができる、というのは実に魅力的な話であろう。そこに付け込んでの詐欺だとするならば、悪質としか言いようがない。しかし残念ながら、現在の自費出版界にはこうした手口が蔓延しているのだ。

 そこで、自費出版を考えている人に、騙されないためのポイントをお教えしたい。
 書店に流通しない記念本を希望する場合、一番重要なのは見積書である。見積書の金額は当然だが、その内容が項目別に書かれているかどうかも大事な点だ。少なくとも数社から取った見積りを項目別に比較検討する必要がある。
 次に、どのような本ができるのか見本を見せてもらうことが重要になってくる。自費出版の料金はピンキリだが、安さに目が眩み、コピーを束ねたような本を作ることになってはたまらないだろう。印刷の質はどの程度か、過去の出版物を確認したほうが安全だ。

 また依頼をするときには、自分の作りたい本をしっかりとイメージしておいたほうが良い。カバーを付けるか、表紙をカラーにするか、本文は何文字何行で組むのか、写真を入れるのかなどである。出版社にもよるが、編集作業の途中で変更すると追加料金が発生する恐れもある。少なくとも契約前の打合せで決めておくべきだろう。
さていよいよ共同出版を行なう際のポイントである。

 やはり一番は見積書であろう。ページ数や部数によって金額は大きく変わるので一概には言えないが、本文にカラーを使わない普通の小説やエッセイで二〇〇万円前後の金額を提示されたら、それは止めたほうが無難である。もっと低い料金、経費負担できちんと書店に流通してくれる出版社はいくらでもあるはずだ。

 次は担当者との打ち合わせである。相手の了承さえ得られるのならば、会話を録音することも考えたいところだが、少なくとも一つ一つの取り決めに言質を取り、必要とあらば念書を交わしたほうが良い。
 刷り部数に関しても注意が必要だ。つい最近の出版ニュースで、契約した部数自体を刷っていない出版社が問題になっていた。出来上がってからでは遅いので、最初の打合せの際、刷り部数確認の方法があるのかどうか詰めた方が良いだろう。

 一番難しいのが、書店営業である。こればかりは相手を信頼するしかない。どのような営業をするのか出版社側に確認し、自身の周囲で多少なりとも知識のある人に問題がないのか聞くのが一番だろう。だが少なくとも、著者の好きな書店に本を並べることができる、などということはありえないので、甘言に踊らされることはないようにしたい。

 最後に、よくある出版コンテストに関して一点述べておこう。『出版社』のコンテストは問題ないし、是非とも応募すべきだと思う。だが、『自費出版社』のコンテストには注意していただきたい。最終選考で落ちて共同出版を勧められた時に舞い上がるのではなく、一旦冷静になって考えなければ相手の思う壺である。
 もしもこれから自費出版や共同出版を行なうという人がいるのならば、後悔することのないように思い出に残る本を作っていただきたい。









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