更新日:2008年1月9日(水)
特集
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今後、お金の流れが合理的になる過程で全国にある第3セクターが破綻していく、という事態は当然、起こりうることです。夕張に限らず、全国でその候補は少なくありません。金融サイドの合理的な動きは、制度の修正も促すでしょうし、従来のシステムも軌道修正を図るものと思います。 なかなか外部からは見通すのが難しい地方債と交付税の関係は、ある意味で財政運用の合理性を阻んできた要因の一つです。ミクロの財源保証が、時間を経てマクロで見ると、周辺の財源環境がまるで変わってしまったとの印象を持つ人がいるかもしれません。よほど注意深く見ないと、トリック紛いに見えることもあるのです。 繰り返しますが、地方債の増額は北海道が典型的で、一言で言えば政府の景気対策に極めて従順に協力をしてきた結果なのです。今日の道債増額という事態を招いたのは、皮肉ではなく北海道は人が良かったというか、良すぎたのかもしれません。ですから、この部分では道庁の方々にすれば言い分もあると思います。今になって自己責任だ、なんて言われても納得できないでしょう。 なぜなら従来の財政の論理で言えば、補助金のついた事業、言い換えれば資金調達のできた事業をやらないというのは、むしろ無能な振る舞いに見えることでした。交付税措置にしても完全に補助金化していたのですから、今の時点で過去の政策決定を詰問するのは酷と言えば酷です。 例えば、地方債増加の時代背景には地域総合整備債(地総債)という国の内需拡大政策を後押しする仕組みもあったのです。地方自治体が単独事業に積極的になったのは、元利償還金の一部が後年度には交付税を増やすことになる地総債の存在もあるのです。自治体が喜んで取り入れたものです。単独事業でありながら交付税措置を100%でないまでも約束した構造でした。歴史的には北海道が、それに対して優等生的なパフォーマンスを示した結果が今の負担に喘ぐという皮肉な状況を招いています。 (5)産業構造について 収入がままならない状態での道債の償還は、歳出をカットしていくことになります。それはすでに始まっています。それは望む、望まないにかかわらず、北海道も従来型の産業構造と決別せざるを得ない状況になっている、ということです。つまり、公共事業を削らざるを得ないのです。 しかし、財政問題に対しては、支出削減をし続ければ解決するレベルでもありません。このことを強く意識した地域政策を打ち出す必要があります。ここで失敗すると、実質的なデフォルトにいたることになります。 北海道は国の事業でも、一部負担をしてきていた公共事業が少なくないので、それが重くのしかかってきていることは前にも申しあげました。今回、北海道は財政再建のために国の直轄事業も負担できないので断っています。これは北海道自身が、ない袖は振れないのと同じで、お金を出せないことによって否応無くそうした状況に陥っていることを物語っています。 従来のあり方が大きく変わってきている徴候の一つです。補助金には地元負担金がありますから、思われているほど国からたくさんお金をもらって、地方が潤っているということではないのです。むしろ、補助金に縛られているという見方もできます。ここから道州制の議論にもつながっていくのです。 北海道を含めて、全国の地方は公共事業をカンフル剤的に使用してきたのですが、そのことがなかでも特に北海道経済の足腰を弱めてきていたことは確かです。ですから、遅ればせながらでも北海道の財政問題は、産業構造転換の誘引になるでしょうし、それができなければ実質的にデフォルトに陥る危険がある点でも、そのラストチャンスと見てもいいと思います。そうすることで禍を福に転じる可能性を高めることもできます。 荒っぽい議論になりますが、建設業も業種転換をしながら、残った建設業者が少なくなった公共事業をシェアしていくことは可能です。現状のように利益の出ない価格帯で競っていても、事業経営として将来性のある見通しを得ることはないでしょう。今の状態は、市場との需給バランスがとれないための消耗戦です。合理性のある市場を形成するには、適正な利益が出るような競争にするためにも段階的に建設業を減少させていく荒療治は、歓迎されないでしょうけれども避けては通れない道です。 このプロセスを納得してもらうためには、今までの公共工事によって出来たものが、地域社会に対してどれだけ経済的に、社会的に貢献できているのかを評価することです。これを問わずにストック整備をし続けるというのは、無体な話です。 例えば農業基盤整備をして農業の生産力がどれだけ向上したのか。そして農業者に事業継続の意欲をどれだけ高めることになったのか。農業地域がそれによって経済活性化がどの程度、図れたのか。 種々の評価観点からの事業の点検作業をすれば、ここでも合理的な判断ができるものと思います。 マクロでみれば、産業を活性化するために投じられている資金ですが、その効果を提示できないでいるのです。北海道の農業地帯に投じられた資金によって、その地域がどれだけ経済基盤を強化できたのか。離農者が増えている実態、後継者難の実情など、投資に見合うリターンがあったとは考え難いと思います。 むろん、生活基盤を整えることも大切ですし、広大な北海道という地域性から、治山治水や自然環境の維持など、地域の生産性向上とは直接的にリンクしない側面があることは十分に承知しています。しかし生産基盤が整ったのであれば、その成果が出て当然なのですが、実情は皆さんがご承知の通りです。人口減少に歯止めのかからない状態は、生産基盤も弱体化していると見た方が誤らないと思います。 (6)投資は地域経済の活性化が目的 地方債の話と離れてしまうようですが、公共事業のために借金をすることの意味は、本来、地域経済社会を豊かにするためのものであり、それによって税収なりその他のベネフィットで借金を返していくのが、お金の貸し借りの常識的な筋道です。ところが投資のリターンがないために過去の借財が余計に重く、大きな負担になってきているのが、北海道の現況です。 「借金はした、借金のレベルは高くなった。地域経済のレベルはそれに比べて上がっていない」というアンバランスは、地域経済をより苦しいものにさせているわけです。投資をしても、投資をしても税収の増加に転じなかったことから、では今までの投資は何だったの? と問われることになります。 より厳しく言えば、投資しなかった方が、現在の負債は少なかったということになります。この傾向は北海道だけではありませんけれど、俗っぽく言えば、後代の人たちは「余計なことをしないでいてくれた方が、良かった」と思うでしょう。 北海道債を取り巻く環境が厳しくなっているのは、交付税が減少するなかで税収は自分のところで賄う、となると結果的に成長産業を育ててきていなかった過去のツケがここでもダメージとなってきます。 この状況を図示したものが前掲の調査報告書(1〜3頁)にありますが、「第2次産業」「第3次産業」を社会資本整備の効率性から見ると、地方部では低く、大都市部で高いことが一目瞭然です。北海道、南九州、東北、北陸、四国などと東海、南関東、近畿では、その格差は歴然としています。 今後を考えるならば、財政全体から見ても、地域経済のかね合いからも、緊縮財政で凌いで何とか地域行政を運営していくことが短期的には可能であっても、それだけでは長期的展望は開けません。そのことを熟知する必要があります。緊縮財政だけでは、雇用機会を創出することも不可能ですから、どうしても長期的な見通しをもった経済政策を考えなければなりません。 (7)雇用の質を向上させる教育投資 そこで雇用を創出するためには、遠回りでも地域での人材を育成する教育の場を用意することです。なぜ、教育かといえば、激変する経済環境のなかで生産性を高めることができるのは人材なのです。人間の質を高めることによって、雇用の質も高まります。北海道の場合は雇用の量も確保しなければなりませんが、今は、質を優先して取り組むべきです。 多様な生涯教育も含めた教育は、将来の活力を生む基盤になりますし、医療や福祉サービスは、公共工事に比べて雇用などの域内効果が期待できます。日本は大学も大学院も高卒も表面的には、雇用条件の違いが大きくはないのですけれど、教育の対価についての意識が北海道は、やや希薄かもしれません。 教育を考える際に学歴を万能扱いするのは、賢明ではないのですが、それでも教育訓練を受けてきた人材と、そうでない人材とでは、その格差は年々拡大していってしまうものです。 北海道において人材のレベルアップを図るには、きめ細かで多方面にわたる施策が不可欠です。派手ではなく目立たないものまでも含めて、知的資源の活用という視点からは、大学などを核とした研究成果や技術シーズの事業化や、産業集積の活用という視点なども重要です。 ハードとしての公共事業を減らしただけの地域政策は、地域全体をジリ貧にさせるだけです。投資の余力を生み出すために絞りに絞った予算を設計して、その上で北海道において大きな産業転換を起こす必要があります。 投資を忘れてしまっては、地域再生の芽も育ちようがありません。地域に合った新しい事業を起こすための投資は、袋小路に追い込まれているような北海道の産業構造の転換を促すと思います。つまり財政再建が結果的に地域にとっては旧弊と化しているシステムを変更させる動機付けにもなります。 また地方圏では、公的セクターが民間事業の創出・育成に先導的な役割を果たしていくことも重要ですし、公的サービスの民営化、NPOの活用なども有効な方法です。さらに地域が主体性を持って改革に取り組んでいくためには、「自己決定」と「自己責任」を基本とする制度的な枠組も不可欠ですし、さらなる地方分権が必要になります。 財政再建が前向きの話になるように、現在の困難な局面を打開して希望を見出すためにも、「財政のピンチ」を「産業構造転換のチャンス」にすることです。それには、道民ばかりでなく、行政トップのリーダーシップがより重要になってきます。 ≪おわり≫ |
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