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更新日:2007年12月12日(水)
ブラキストン線

第150回  “拉致”問題について(粕谷一希・評論家)



「マント」 カット:松井茂樹
“拉致”問題について

 北朝鮮の核施設をめぐって、関係する東アジアの六ヵ国の国際会議が開かれて、かなりの時間が経った。この会議の様子を眺めていると、北朝鮮の執拗なまでの粘り強い自己主張に驚嘆させられる。北朝鮮の行動はクレージーだという印象を私などは否めなかったが、この執拗さ、粘り強さ、計算高さなど、どのような発想とシステムから可能なのか。独裁国家北朝鮮の構造分析がもっと精力的に行われるべきだろう。

 北朝鮮の過剰なまでの演技力に比べると、他の国は冴えない。アメリカのヒルズ代表も抑制的で真意がよく掴めない。中国やロシアが一方で北朝鮮にコミットしながら、大国としてアメリカとの共存を考えなければならず、中露共に立場の難しさからか、“奥歯にモノの挟まった感じ”は否めない。そして韓国もまた体制の異なる同胞に対し、アンビバレントな印象は拭えない。

 これに対して、わが日本だが、核問題と並行して“拉致”問題の解決を主張する外交姿勢は、正しい論理でありながら、うっかりすると孤立しかねない。拉致家族の方々の悲劇とその主張は誰しも共感と同意を表明するであろうが、その問題と外交交渉とは次元が違うのではないかという印象を否めない。

真の争点は何か

 しかし、現在進めている外交交渉そのものも、事柄の真相を十分討議しているとも私には思えない。そもそも、テロ支援国家とは何を意味するのか。テロ支援国家とテロリスト国家とどう区別するのか。北朝鮮の核武装とテロリズムとはどういう関係にあるのか。どうも漠としていて私には納得できない。

 核施設の撤去が明確に進めば、アメリカは北朝鮮のテロ支援国家の規定を解除するという。しかし、核能力とテロ支援国家とはどう関連するのか。日本の新聞報道では納得できる説明がない。
 本来、核能力とテロリズムは別の話なのではないか。核能力があろうが、なかろうが、テロリズムは存在する。現に、北朝鮮の惹起したラングーン事件(1983年)、大韓航空機爆破事件(1987年)、よど号乗っ取り事件(1970年)の犯人を匿うなど、北朝鮮がながい間、行ってきたテロリズム事件は、核能力とは別ものである。拉致問題もそうした北朝鮮の無法性の延長上で起こった問題である。

 日本人も多数拉致されたが、私がびっくりしたのは、韓国の有名な映画監督夫妻を拉致して北朝鮮で映画を作らせたことである。金正日が如何に映画好きだからといって許される事柄ではない。
 北朝鮮の無法性、テロリズムは汚く北朝鮮の国家的体質を形成しており、北朝鮮が国際社会の責任ある一員になるためには、この性格全体への反省がなくてはなるまい。

 関係六ヵ国それぞれの主張が、あいまいかつ不透明なのは、こうした議論が欠けているためではないか。拉致問題の同時解決という日本の正しい主張も、もう一つ説得力をもたないのは、こうした全体への立論を欠いているためではないか。









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