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更新日:2007年9月7日(金)
ぶらりしゃらり

第113回 I shall return.



轡田隆史 エッセイスト



題字:筆者
来年のサミット会場(旧・エイペックス)を背に揺れるススキ(写真:石井一弘)


 防衛大臣の退任の記者会見で、小池百合子さん(55)が、「I shall return(かならず帰ってくる)」と語っていたのが、面白かった。
 テレビで、そのことを報じるVTRを受けたぼくは「あの太平洋戦争の初期、日本がまだ威勢のいいころ、フィリピンを脱出した米極東軍司令官のマッカーサーが語った言葉だけれど、小池さん、やがてはマッカーサーになるつもりかねえ」とジョーク半分にコメントした。
 いうまでもなくマッカーサーは「return」して、ついに日本を敗北に追いやり、「帝王」のように君臨したのだった。
 ぼくみたいな老人が、「I shall return」の故事を承知しているのはあたりまえだが、さて、その記者会見の記者たちは、はたしてその場ですぐに、引用の意味がわかっただろうか? いちセンパイとしては、いささか心配だった。
 あの小池さんのことだから、そう語りながら、記者たちの反応を観察して、ハハーン、若い記者諸君、わかっちゃいないな、と内心おかしかったのではないかしら。
 翌日の朝刊はもちろん、そのことを報じていたけれど、朝日は「アイ・シャル・リターン(私は戻ってくる)」と、マッカーサー元帥の言葉を残して会見を終えた、とだけ記した。毎日も、米極東軍司令官だったマッカーサーの言葉を引用し、と記すだけだった。
 これじゃ、一部の老人はともかく、多くの読者には、何のことやらわからなかったにちがいない。ただし、読売は、1942年3月、日本軍に破れ、フィリピンから脱出を余儀なくされたときに残した言葉、ときちんと説明していた。オーストラリアに無事、到着したときに発した言葉だが、まあそれはともかく、敗北と脱出の背景まで書いてくれなければ、小池さんとしては、引用したカイがないというものだろう。
 ところで、あの騒ぎだけれど、国民に選ばれた国会議員である大臣に対して、いち官僚が反抗するなんて、仮に小池側にあれこれムリがあったにしても、原則としては許されないのじゃないかしら。
 お互いのニンゲン関係なんぞが、陰湿にからんでいたようだけれど、「有事」が国外ではなくて防衛省でボッパツとは恐ろしい!
 それに、永田町にもマスコミにも、どこか「オンナのクセに」といった空気がちらついていたように、ぼくは感じた。小池さんのカタを持つギリはないけれど、原理・原則として悪例を残したと思う。
 これとは次元の違う話だが、マッカーサーといえば、朝鮮戦争で連合軍総司令官として君臨していたとき、トルーマン大統領の意に反して中国本土爆撃などを主張したため、即座に解任、つまりクビになった。
 マッカーサーを天皇以上に偉い人、と思いこんでいた日本国民はビックリ仰天した。シビリアン・コントロール(文民統制)、つまり国防に関しては、軍ではなく文民が最高の指導権を持つという民主主義の原則をはじめて見たのだった。
 そういえば、マッカーサーはアメリカの国会で日本人のアタマのテイドについて「12歳テイド」と断じた人物でもあった。それから半世紀ほどたったいま、さあ、われわれのアタマのテイドは、いくつぐらいになっているのだろうか?




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