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更新日:2007年9月20日(木)
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「北海道生活の質」と金融常識(4)上野正彦・日銀札幌支店長



運用成績は資産の組み合わせ次第
 
 第3条です。ポートフォリオというのは元々が「紙挟み」という意味で、分散投資の説明に使われます。モダン・ポートフォリオ理論という非常に難しい理論がありますが、結論は分散投資を行えば、同じリスクでより大きなリターンを得ることができる、というものです。
 100%を株に投資するとか、100%を国債にする、というやり方はポートフォリオ理論からは勧められません。100%のリスク資産とか、100%の安全資産というのは止めて、適当にリスクを組み合わせることによって、より多くのリターンを得ることができるようになります。

 今日、是非、覚えていただきたいことは、米国の研究によると、資産の組み合わせで運用成績の9割が決まる、ということです。これはアセット・アロケーションと言います。資産の分散のポイントは、株も外国為替(FX)も同じで、いつ買うとか、いくらで買うというのは最重要の問題ではありません。どういう資産の組み合わせにするのか、それで長期のパフォーマンスが決まります。代表的な金融商品でいえば、預金、日本の国債、日本の株、外国為替、外国債券、外国株、不動産、商品、投資信託等の組み合わせで決まってくるのです。

運用の基本は国債投資

 第4条です。一般にポートフォリオ理論では運用の基本は自国の国債投資(安全資産)である、ということです。
 金融機関の手法を自分の資産運用の基本にして欲しいのです。今、預金金利で言えば1年ものは0.4%程度ですが、5年ものの国債金利は、1.5%ですから5年間使う予定のない資産は、定期預金から国債に振り替えるだけで運用利益は数倍になります。

株式投資ではプロが猿に勝てない

 第5条です。ここで株式投資のポイントを述べている1冊の本を紹介します。アメリカの経済学者のもので、バートン・マルキールの「ウオール街のランダム・ウォーカー」(1999年・日本経済新聞社)という本です。
 このなかにサルを使った株式投資の実験が出てきます。壁にアメリカの株式の銘柄を書いたところにサルに20個の投げ矢をさせて、完全にランダムな推奨銘柄を決めるものです。こうして得られた運用実績と、ウォール街の一流プロに推奨銘柄を挙げさせて運用した実績を比較すると、10年、20年のスパンでみるとサルが勝ってしまう、というものです。プロもサルに勝てない、というものですが、この結論はプロは市場平均を上回れないというものです。

 もう一つのファイナンス理論の有名なものは、日常生活で道に1万円札が落ちていることは滅多にない、ということです。稀に道に1万円札が落ちていても必ず誰かが拾って届けるか、自分のものにしてしまうということです。つまり、割安な株の銘柄というのは世の中に無いということです。株のアナリストが常に割安なものを見つけて、割高な銘柄を売っていますので、現在入手可能な情報は全て現在の株価に織り込まれている、という理論です。

 実は30年前にキャノンの株を買っていましたら、現在は65倍になっています。10年前にヤフーの株を100万円購入していれば、それは現在3億円になっています。ラッキーな人は必ずいるのですが、プロも素人も未来を予見することはできません。今、現在の情報で考えることしかできないわけです。そこで、「市場平均に投資しろ!」 というのが株式投資のオーソドックスな考え方になっています。つまりダウ平均に投資しろ、ということです。

世界経済の成長を把握する

 第6条。これは世界経済の成長に投資しようというものです。個人投資家が世界の金融市場にアクセスできる時代ですから、世界経済の動きを捉えることは日本での運用のリスクヘッジにもなるのです。
このところ世界の経済は毎年5%成長をしていますから、そこに投資することは有力な手段です。
 世界には想定不能なリスクがたくさんありますが、為替レートについては、「ビックマックレート」を考えると世界の状況が理解しやすいです。これはイギリスのエコノミストが開発したもので各国の購買力から割り出すものです。
現在、日本では1個280円です。米国では3ドル22セント、ユーロでは2.94ユーロになっています。円ドルレートで言えば、今、1ドルは87円です。円ユーロでは、95円です。

 為替リスクで言えば、購買力平価がひとつの目安になります。また、長期で外貨に投資すると現在の円とドルの金利差が4%ありますから、10年間ドルに投資をしますとリターンだけで元本が4割増えます。10年間でそれだけ増えるのであれば、為替リスクはかなりカバーできることになります。
 つまり、内外金利差と為替リスクの判断がポイントになるということです。

美味しい話に騙されるな!

 第7条は、「美味しい話に騙されるな!」です。社会には、美味しい話が捨てるほどあるのが世間です。
例えば、手数料はいくら安くても、短期間に何回もお金を動かすと、元本に対しかなりの金額になります。この点は注意が必要です。

金融リテラシーを学ぶ
 
 最後に第8条。金融リテラシーがあれば、自由なライフスタイルが可能だということです。家というのは持つべきなのか? 賃貸でもいいのではないか?  
 手術費用が100万円かかっても、健康保険で7割はカバーしてくれますから、残りの30万円が自己負担です。どの程度の自己負担が必要かを知ることは、ライフスタイルを考える上で非常に重要です。

 北海道の金融が足腰の強いものになるためにも、道民の一人一人が「金融リテラシー」について基本知識を身につけていただければ、大きな経済力を発揮することの出発点になるのではないかと、私は期待しています。



≪おわり≫







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