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更新日:2007年9月20日(木)
特集

「北海道生活の質」と金融常識(3)上野正彦・日銀札幌支店長



(3)資産運用の8ヶ条 

家計の基本方程式を理解する

 札幌でも街で人気の資産運用セミナーには、お年寄りもずいぶんと参加しています。金融機関の開催するセミナーの結論は、資産運用には長期分散投資がいい、ということになりますが、今日のこれから話す8か条は、私も実践しているものです。

 第1条は、家計の基本方程式を知ることです。
 収入−支出+運用資産×運用利回り=全体家計収入

 普通の家計では、運用収入がフローの収入を上回ることはめったにありません。森永卓郎さんの「年収300万円時代を生き抜く」というベストセラー本がありますが、日本のサラリーマンの平均年収は439万円です。
 仮に、平均年収を400万円とすると、運用資産の運用利回りから年間400万円を得るというのは、大変なことになります。元本で1億3千万円あれば年間3%の利回りで400万円の収入になります。この3%で回すこと自体が今の日本では難しい話です。

 金融広報委員会の調査では、金融資産をもっている家庭の平均額は1440万円です。これを中央値でみると、760万円くらいです。この違いを説明します。一人が1億円を持っていて、残り9人がそれぞれ百万円をもっているとすれば、総額1億900万円になります。この平均は1090万円になります。これに対して、中央値は一番多い資産から一番少ない資産まで並べた中心の数字にあたります。つまり、トップに1億円の人がいても残り9人が100万円の人たちですと中央値が100万円になります。日本全体で言えば、中央値が皆さんの実感に近い数字かと思います。
 
 わが国は貯金がゼロの人たちが独身世帯を中心に2割います。この2割を含めると、全世帯の平均金融資産は、1073万円、中央値は420万円になります。

 他方、住宅ローン等の負債についてみると、借入金のある世帯の平均借入額は1368万円で、全世帯の借入額は536万円ということになります。このように、平均的な家庭の資産・負債の規模に鑑みれば、1億3千万円の純金融資産をもっている人は、めったにいないということになります。

 通常の家計では、運用の収入がフローの収入を上回るということはめったにありません。ただし、これからは新しい運用の知恵ということが極めて重要になってきます。
(編集部注:昭和62年に出された『アメリカの心』(学生社)で紹介された「大きな2セントの違い」と題するメッセージがある。――1ドル稼いで99セント使う、それはいい。だが1ドル1セント使ったら君はトラブルに向かっているのだ。(中略)1セントの倹約は1セントの稼ぎ。カルビン・クーリッジがかつて言った。「貴殿の資力の範囲内で暮らすことほど大切な独立はない。」君の小切手帳をこれまでに読んだいちばん悲しい読み物にしてはいけない。)

100年に一度のリスクを想定する

 それから第2条ですが、百年に1回のリスクに備えるということをお伝えいたします。本多静六という明治・大正・昭和にかけて活躍した学者がいます。戦前の東大教授で、「公園の父」とも言われる方です。東京の日比谷公園、明治神宮、北海道の大沼公園などの設計・改良にかかわっています。
 この人は資産家としても大成功をした方で「私の財産告白」「わが処世の秘訣」という本を出しております。内容は極めてシンプルでして、必ず収入の3割を投資に向け、残り7割で生活をする、というものです。投資の3割は株の購入に充てます。長期投資をすることで小さな元手が雪達磨式に増えることを実証しています。戦前の淀橋区(今の新宿区)で高額納税者のトップにいたほどの方です。

 しかし、この人も予想をしていなかった歴史の転換期が到来します。それは、第2次世界大戦で日本全体の株式が大暴落をしたことです。これで大きなダメージを受けたのですが、このようにみると、百年に一度の出来事に備えることも必要です。
 百年間のイメージを掴んでみようと思います。
1907年(明治40年)からの百年間にどのようなことが起きていたのか、金融面から振り返ってみます。

(1) 第一次世界大戦後からの反動恐慌
(2) 関東大震災
(3) 世界金融恐慌
(4) 昭和金融恐慌
(5) 金解禁
(6) 第2次世界大戦後の混乱
(7) オイルショック
(8) バブル崩壊

 こうしてみると、大きなショックが百年の間に8回も起きているのです。金融の面からいえば、これをいかに乗り越えるのかが重要です。投資セミナーでは、あまり長期の歴史のことを言いませんが、短期のハイリスク投資だけではこの危機を乗り越えることは難しいのが現実です。

 プロの金融機関のリスク管理としては、99.9%の発生確率のリスクの最大損失額をカバーするのがリスク管理の基本になっています。その額が自己資本の一定比率でおさまるようにしているのです。バリュー・アット・リスクという専門用語がありますが、単純化して言いますと、元本の半分くらいを失うような事態にも耐えられるように運用することが必要です。1%の確率は、100年の間に一度起きることを意味します。金融機関は、これへの対応を用意しています。









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