更新日:2007年9月14日(金)
特集
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話を聞かせてくれた大和寛室長は、地域を活かすための旅行商品などを長年、開発してきた方である。以下の質問に対して経験に基づく実情を語っていただいた。 質問 1=自治体の「移住作戦」を近くで見ていて、どのような感想をお持ちですか? それぞれの自治体の方々は、当然のことながら行政管轄の地域については詳しい情報をお持ちです。ですから移住を希望する方々にも、自分のエリアのことについては、親切な情報提供をされていると思います。 ただ、問題点を一つあげさせてもらいますと、私たちのような旅行業者が持っている地域横断的な情報については、やや弱いかと思います。長期滞在でも短期滞在でもやってくる方々にとっては、拠点になるのは一つの市町村かもしれませんが、落ち着いた生活を作るためには、近隣市町村のことも知っておきたいものです。ビジネス客ではありませんから、落ち着いて腰を据えるには、ちょうど富士山の裾野が大きく広がるように周辺地域の特徴も知っておくことが、長期滞在をより快適なものにすることになると思います。 質問 2=移住希望者をご案内することも多いと思いますが、その方たちの共通項は? それを申しあげる前に、実は私ども会社で開発し某新聞社と共同で取り組んでいる「大人の沖縄自然学校」というロングステイ商品があります。この商品が完成したのは、沖縄の行政体の方との古くからの付き合いがあって、相談を受けたことによります。 もともとは、北海道が発祥の地とされる「パークゴルフ」の愛好家の方々を冬場に沖縄でプレーを楽しんでもらうアイデアから生まれたものです。その相談をされてきた沖縄最北端の村は、沖縄の中では観光地という位置づけではなかったのですが、北海道の人たちにとっては十分に南国を味わえる地域でした。 そこへ廃校になった学校施設を利用する方法は? というお話があったものですから、長期滞在型のホテルとして再活用する案が出てきました。募集したところ、まずは冬場の生活が加齢とともに負担になることが予測される方々が、現地視察というような気持ちで主に奥さんがツアーに参加されました。その下見の後に、今度はご主人も一緒に参加される、というパターンが多いようです。一つの共通項です。 そこでご近所の方々との交流がスムーズに行くようになると、北海道の冬場の生活を避けて、その期間だけは沖縄暮らしにしようということになります。さらに住居を求めるところまで行きましと、私ども手を離れて、現地の不動産屋さんとの交渉になっていきます。 これなどは、若い人たちというよりも中高年の方々による「二地域居住」ということになるかと思います。その行動様式は、大変に慎重であるように思います。また、現地の方々とお付き合いも始まりますが、その契機は移住される方々からの積極的な働きかけが前提になります。移住者がその先の地域で無条件で歓迎される、とは思わないほうがいいように思います。 質問 3=住む「自由」を獲得している人たちの傾向に特徴的なことがありますか? 先ほどの例にも見られますよう、やはり将来に対してアクティビティの高い方たちが「住む」場所の開拓をされるわけですから、移り住んだところでの人間関係の作り方も前向きです。また、そうでないと、何かお客様気分でいると周囲との交流も先細りになるように思います。新しい環境に飛び込むわけですから、一定の適応力も求められます。体験的には、奥様方の方が意欲的な印象を受けております。 質問 4=実際に「二地域居住」するメリットをどのように捉えていらっしゃいますか? これはもう、通過型の観光客よりも滞在型の観光客の方が地域経済への貢献度も高いわけですから、こうした方々を地元が本来の意味でのホスピタリティを発揮するかどうかで、その反応や定着度合い、成果も決まってくるように思います。 以前から大型バスでの観光業は減少傾向にありましたが、個人観光客もまたレンタカーなどで自由に移動して歩く傾向は強まっています。ですから、ロングステイのお客さんたちを大切にもてなす、ということを今後は考えていくことは喫緊の課題でもあります。その意味で二地域居住は、もっと研究されていいように思います。人口の減少化はどこでも見られる傾向ですから、そうなると交流人口を増やすことにもっと官民一体となって取り組むべきではないかと思います。たまたまかもしれませんが、沖縄の村と当社の繋がりを、地元の北海道とも作りたいと思っているところです。 質問 5=北海道で格好の「居住地」と思われるところは、どこですか? 直接的にどこが良いか、という答えはないかと思います。クロスカントリーが趣味の人には道北のそうしたコースが地域内になるところは天国になるでしょうし、居住地の選択は長期滞在をしようとする人のライフスタイルに沿ったものになってくると思います。 ただ、どのような特徴を打ち出すにしても、長く生活をすることを考えますとテレビの「鉄腕ダッシュ村」という長寿人気番組に見られるような、日本の地域に根付いている生活文化の掘り起こしと、それへの誇りのようなものがあって、新しくやってきた人たちに興味・関心を抱かせるものになると思います。自分たちがあまり大切にしていなかったことに、ヨソの人を惹き付けるだけのパワーは生まれないように思います。 ですから、そうした地域のことをよく知っている人材を見つけ出して、そうした人たちとの交流経験の場を用意する「仕掛け人」たちのいるところは、行ってみる価値があるように思います。そうした地域は、どこか活気があるものです。そして人は、そのようなところに自然に集まってくるものと思います。 質問 6=二地域居住の積極的な意味・意義をPRして下さい。 これは、2005年に国土交通省が提唱したライフスタイルでもありますが、UIターンによる定住促進とは少し違う目的をもっています。定住となると、それはやはり大事(おおごと)の人生設計になりますが、時間的、経済的にも多少、余裕のある人たちが、都市と農山漁村などを定期的、反復的に一地域に滞在することは、動く人にも、受け入れる人にも新しい刺激と行動力を引き出すものになると思います。 関係者がすべてリフレッシュすることで、今まで見えていなかった地域の魅力を再発見、再構築することが可能になります。良い循環が始まるという点では、金融の世界で言えば「信用創造」が起こるようなものかと思います。その反対が「信用危機」ですが、人が流出するところにその症状が見てとれます。ですから、二地域居住をもっと真剣に考えていくことで、地域の活性化に結びつく動きにもなると思いたいところです。 質問 7=「田舎暮らし」への潜在的な希望者は多いでしょうが、顕在化させる手立てを教えて下さい。 何と言っても先行して移住もしくは長期滞在をしている人たちが愉しい表情でその地域での生活を送っているかどうかです。愉しい様子だなあと羨ましがられるようなライフスタイルを実践していれば、当然、そのことに興味をもって参加する人たちが出てきます。 私どもの沖縄ロングステイ商品も、満席状態が続いていますので、皆さんのクチコミも含めて、評価の高い提案をさせてもらったように思います。今後は、主としてですが、夏場に冷涼な北海道でのロングステイを全国の方々に提供したいものと考えています。関係機関との協力を取り付けながらの作業になると思います。体験的に申しあげますと、沖縄の行政の方々がパークゴルフへの熱心な取り組みをされて、それが今の私どものロングステイ商品に発展してきていることを考えますと、自分たちの地域をみつめて、必死に磨く作業をすることが、潜在的な希望者に届くメッセージになるように思いますし、その契機をご提供できればと思います。 質問 8=人を惹き付ける地域の要素「知恵」「魅力」「力量」を挙げて下さい。 これは大変に地味な話ですが、大手企業を早期退職された方が、日本海側のある町に移住されるように準備をされています。お子さん達はそれぞれ独立をしていますので、自分の価値観を大切にされて、その町にある福祉系施設の主宰者の方がされてきた今までの実践に賛同されての移住かと思います。 その方は今までもそこの事業には協力をしてきているそうですから、十分にそこの魅力も困難さも承知されていると思います。大手企業でマネジメントをされてきていますから、そうした事業体にとっても大変に高い能力をもった方に参加してもらえることになるでしょうし、地域にとっても極めて有益な人材の獲得になると思います。新居ができるまでは当面、廃校になった教員住宅を借りることになっているそうですが、ヘッドハンティングしてでも欲しいような方に移住には、行政ももっと協力的であっていいかなと思います。 つまり、「知恵」も「魅力」も「力量」も、そこに住む方々の意気込みから生まれてくるように思います。因みにその町は、今夏の「タコ箱・オーナー」の発案で全国にその名を知らしめたところでもあります。 質問 9=「二地域居住」の構想のステップを示すとどうなります? 思いつくままに受け入れが側の心構えを箇条書きふうに申しあげます。 (1)行きたくなるような地域についての情報を発信すること。 (2)下見を十分にしてもらうこと。 (3)来られる方々の目的を明確にしていただくこと。いつまでもお客さんの気分でいられては、地域とのイーブンな関係での交流ができませんし、長続きしません。 (4)小さな実験の場を提供すること。たとえばクラインガルテン(滞在型市民農園)で、経験を積むことも、二地域居住のミニ体験になるものと思います。 質問10=多様なライフスタイルを保証するものは何でしょうか? 田舎暮らしにあこがれる人たち、スローライフを実践しようという人たち、いろいろな生活設計があっていいでしょうし、それが人々の生活の質を高めるものであれば、そのような需要に対して北海道という舞台を提供することは意義があると思います。ただし、流行を追うよう気分で参入しても結果は乏しいように思います。一昔前にも田舎ブームがありまして、「『だれか、そろそろ都会に戻って来いよ』と言ってくれないかなー」と、撤退するいい訳を必死で探していた人たちもいたものです。 それでも、改めて都市生活だけではないライフスタイルを志向する人たちに北海道の空間を提供するためにも、北海道自身が新しい価値観を提案すべきだろうと思います。そうした基礎工事をしてから、流行を捉えるのは悪くないと思います。参考までに申しあげますと、最近流行の「スローフード運動」も、元祖イタリアの動きはマクドナルドのローマ出店に反対をするものでしたが、運動拠点はピエモンテというところで、地域主義を掲げる北イタリア独立運動ともつながる地域です。そうした根っこの部分で流れている「思想」のようなものも視野に入れてライフスタイルの提案となれば、それは多様性を認めるものになる可能性はあるかもしれません。 |
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