HOME > 新・若手しゃりばり人 > 第1回 版画家の道を歩く大学生
更新日:2007年8月20日(月)
新・若手しゃりばり人
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シルクスクリーンという技法 現役の大学生2年生である。7月14日(土)に開催された「茶廊法邑ギャラリー大賞」の表彰式に参加させてもらった時に、作品とご本人に出会ったのが初対面。「COCOON」とタイトルの付けられた「シルクスクリーン」の多色刷りは、奨励賞を受賞していた。 大賞受賞作もすばらしかった。ただ私の好みかもしれないが、石井さんの作品に目は行った。受賞式が終わった後に、石井さんに作品の解説というか、技術的なことを中心に話を聞かせてもらった。 シルクスクリーンという版画技法は比較的新しいものだ。石井さんの話では、100年くらいの歴史だという。「絹の織り目や図版をくりぬいた型紙などの版の穴を通して、インクを刷り取る技法」、つまり孔版で、イメージとしては団塊世代以上は、「孔版」=「謄写版」というイメージが強いかもしれない。洋風に言えばステンシルと呼ばれる合羽摺りなども孔版の世界である。その応用範囲は広い。因みに福井良之助(洋画家・1923〜86)の孔版画は、アメリカ人に人気があって俳優のジョージ・チャキリス、ユル・ブリンナーなどもコレクターだったそうな。 シルクスクリーンは、凸版、凹版、平版、孔版などに分けられる版画の分類に従えば、最後の孔版に属する。石井さんの今日に至る表現は、高校時代からの話にさかのぼるのだが、所属する道都大学の中島ゼミでは、活発な活動が展開されているらしく、インターネットの検索でも、その活動の一端がわかる。年に2回開催される「道都大学 中島ゼミ展」(版と型をめぐって〜07.8.14−8.19:札幌市民ギャラリー)の直前に話を聞かせてもらった。 謙虚で意欲ある若者 インターネット上にある「北海道美術ネット別館」というところでは、石井さんが受賞した「第3回茶廊法邑ギャラリー大賞展」のレポートが掲載されている。そこでは「道都大学生の石井誠さん『COCOON』は、シャープさが光り、奨励賞を受賞しました」という記述がある。 そのコメントには、当の石井さんからの書き込みがあり、「ありがとうございます!精進します。ただ、今回規格外ということで表彰式後に少しだけかざられたミズノ(漢字が解らず失礼なのですが)さんの日本画はとても素敵な作品でした」(2007−07−15)という感想が記されている。 創作の世界にいる者同士で通じ合う「美」の会話ということなのだろうと思うが、他者の作品にも関心を向け、きっとそこから吸収するものも多いことを体感的に知っているのだろうと思う。凡庸な創作意欲だけでは陥りやすい「自分の作品が一番!」という思い込みの罠から逃れている賢明さ、謙虚さが伝わってくる。授賞式当日、自己の作品を語る口調にも誠実さがあった。 「ここの版ズレは、まだまだ技法的にも未熟なことを証明しているのです」と、作品の背景を彩る黒を基調としながら青色を重ねて深みを出しているのだが、目を凝らすと確かに青色の版も見えてくる。 これが版画の庶民性でもあるが、作家にすればそれは許してはならない基本的な技術のミスということになるのかもしれない。一瞬、黒を基調としているためにメゾチントという技法の銅版画にも遠くからは見えたのだが、近くによって見れば、もっと柔らかい色調でまとめられた作品だった。 さて、第3回の公募展を開催した「茶廊法邑」については、「しゃりばり」でも1年間、その動きを連載したこともあって、その成長ぶりを比較的近くで観察させてもらったものだ。ギャラリーオーナーでこの公募展を通して若手を育てたいという当初の目的を積み重ねてきた法邑美智子さんの活躍ぶりは、今更、報告するまでもないが、一言、触れておきたい9月のイベントがある。「茶廊法邑」オープン3周年記念として、9月11日に札幌駅北口にある「エルプラザ」を会場にしてのお祝い(?)の会が開かれる。ゲストには、この茶廊法邑をいたく気に入ったデザイナーのコシノ・ジュンコさんも来られるという。 茶廊法邑育ち このギャラリーを訪れた各界の著名人は少なくないが、札幌市の中心街ではない住宅街の一角に、そうした空間が生まれ、順調に育っていることは、驚異的な出来事だろう。 街おこしを主張する人たち、その助言をする人たち、その手伝いを申し出る人たち、それを享受する人たち‥‥さまざまな人のネットワークが、「法国寺」の北側にある「茶房」と「ギャラリー」が併設されたところから生まれている。 そして、公募展で励まされた若い人たちが、さらに自分の道を力強く歩み出しているものと思う。それは石井さんの一言からも想像できるものだ。 「大学の先輩に版画家の鳴海さんや造形作家の藤沢さんなどもいて、教えていただくことが大変に多く、いずれ、日本を飛び出して世界でも作品を発表したいと思っています。自分にとっては油彩や水彩ではなく、版画のなかでも反転することのないシルクスクリーンが今の自分にはキッチリと合うように思っています。この百年で発展したシルクスクリーンです。幸い、今の大学での設備は全道一でもあり、ここでみっちりと腕を磨きたいと思います。中島先生に『アイデアで描くのではなく、情熱で描くように』というアドヴァイスを肝に銘じています」 「おだてられれば、あなたを信じない。批判されれば、あなたを嫌いになる。無視されれば、あなたを許さない。勇気づけられれば、あなたのことを忘れない」(ウィリアム・A・ウォード)という。この言葉を発した人物がどういう方なのかは知らないが、人間を観察する力はスゴイ。石井さんにとって「茶廊法邑ギャラリー」での具象作品による受賞は、勇気づけられたことは確かなようだ。生涯、忘れられない節目かと思う。これからの長い創作活動が石井さん自身を大きく成長させるに違いないが、札幌での修行をさらに積んで、より大きな作家になってもらいたい一人である。 |
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