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更新日:2007年8月20日(月)
特集

『成長する中国との付き合い方』(遊川和郎〜3)



4.中国のこれから

――現実に中国にはいろいろな問題があると思いますが、中国の今後をどのように見ていますか?

抵抗勢力化する「勝ち組」

◆30年前にはほぼ横一線でスタートした国民の豊かさに向けた競争は、1世代相当の時間を経て想像を絶する差を生みました。
 しかし、30年近い飛躍的な経済成長の中で、既得権益層が形勢されました。言い換えれば、「改革・開放の勝ち組」です。日本から見ていると、「負け組」である後進地域や貧困層をどうするかが最大の問題のよう思えますが、厄介なのは既得権益層が自分の利益を手放そうとせず更なる利益を追求しようとすることです。

 中国経済は今年で5年連続の2桁成長は確実で、その間、過熱やバブルを懸念する声があがっています。政府も手を打っていますが、なぜ効果がないのでしょうか。各地方がひたすら自分の成長を第一に考え、成長を「自粛」しない結果です。貧しい地方や人々の底上げはもちろん必要ですが、今の高成長は豊かな地域や人々が後ろについてくるのを待てないで突っ走ろうとしているにほかなりません。
「勝ち組」は次第に抵抗勢力化してきます。中国の難しさは各地方の成長の総和が国としての理想の成長とは異なることです。

 先を急ごうとする豊かな人たちをいかに立ち止まらせるか、それが最大の問題です。中進国が政治的な危機に瀕するのは、こうした利益関係の調整が行き詰まる結果です。特に、成長が鈍化し始めたときに、問題は顕在化しやすくなります。

優秀な人材がどこに集まるか

◆中国は事実上、中国共産党による一党独裁国家ですし、国民が直接選挙を通じて意思表示する仕組みはありません。また、幹部の腐敗も極めて深刻な問題です。国の仕組みがなお民主主義国家と隔たりがあるのは事実です。しかし、私は中国の人材調達、人材育成システムを見ると決して国の将来は暗くないと思っています。
 まず、優秀な人材は各地方、各層から共産党員としてリクルートされます。昨年末で党員は7239万人、人口の5%強に相当するエリートが中央・地方、政府・企業の中核となってそれぞれをリードする仕組みです。そうしたエリートがしのぎを削って実績を上げてより上を目指そうとします。

 こうした中国の幹部候補生はさまざまなレベルでの問題解決を要求され、その度に淘汰されながら、クリアした人が次の段階に進むわけです。
 このように優秀な人間が全国幅広い層から中国共産党という組織を通じて集まり、内部で切磋琢磨するシステムは一党独裁国家だからこそできることかもしれません。

 しかし何と言っても、国の最も重要な資源を握っているのは強みです。翻って日本の場合、例えば、優秀な人材はどこに向かうでしょうか。少なくとも政治家を志すのは一般的ではないでしょう。日本の政治は優秀な人材の新規参入が少なく世襲化していることが劣化を招いている大きな原因です。
 またこうしたエリートは入れ替わり立ち替わり党学校で長期間(数ヶ月単位)の研修を受け、世界の潮流や直面する問題への認識やより大所高所での視野を涵養します。同じ人間が昇進する度により高いレベルで何度も研修を受けるのが普通です。

 わが国の行政機関や企業でももちろん研修はあるでしょうが、中国は国が丸抱えでやる分、大がかりです。不在期間を気にせず、国家レベルでの講師や地方視察が組み込まれるなど質の高いもので、国家的な立場からの見識を高めるトレーニングが行われています。日本でもリーダーの養成や真の意味でのエリート教育が必要ではないでしょうか。



5.中国と付き合うために

――中国の現実を受け入れながら付き合うためには、どうしたらいいとお考えですか?

一目置かれる存在に

◆経済関係はともかく、近年日中関係が冷却化している原因の一つに、国民レベルで互いに尊敬できる相手がいないことがあると思います。古くは魯迅と藤野先生のような人間関係もありました。
 1970年代から80年代にかけて、中国で「鬼の大松」は戦後の驚異的な経済復興を成し遂げた日本国民を象徴するものでしたし、高倉健に不言実行型の日本人のイメージを重ね合わせました。もちろん、そこには中国が日本との国交正常化を行うための宣伝工作もあったのですが、その後、中国人の尊敬を集める日本人がなかなか各界で見あたりません。

 著名人に限らず、中国人が直接接する日本人の交流も大切です。ビジネスで中国を訪問したり駐在する日本人が増えていることは前述したとおりですし、観光で来日する中国人も増えています。そこで日本人や日本社会のよさを知ってもらう、実体験してもらうことが何より重要です。
 いきなり尊敬されなくとも、それぞれの日本人が一目置かれる存在になることは大切です。一目置かれていなければ相手の言うことに積極的に耳を傾けようとはしませんから相互理解は不可能です。日本人一人一人が国際社会で通用する存在になることが、遠回りでも相互の信頼を築く基礎になるのではないでしょうか。



≪おわり≫




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