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更新日:2007年8月20日(月)
特集

『成長する中国との付き合い方』(遊川和郎〜2)



3.社会構造や価値観の違いから中国を理解する

――中国については脅威論、崩壊論など、百花繚乱というべきか、百家争鳴というべきなのか見方によって分かれます。中国ウオッチャーとしては、どのように中国を観察されていますか?

変化と多様性の国

◆中国について諸説飛び交うのは、中国が変化と多様性に富んだ国であることにほかなりません。
 中国が目まぐるしいスピードで変化していることは報道等を通じて皆さんご存知でしょう。数年たてば街の風景のみならず物事の前提が一変しています。また地域による差が大きいことももちろんですが、土地土地の習慣や人々の気質に加えて発展段階の違いも年々顕著になっています。
 
 そして何よりもこうした国の多様性や落差(ギャップ)が日本人や西側社会の常識を越えているので、一つ一つの現象から全体をどう位置づけてよいのかわからなくなります。
 億単位の資産を持つ人も珍しくなければ、収入が年間1万円にも満たない地域が存在しています。有人宇宙飛行に成功する一方で、巷には粗悪品やニセ物があふれていたり、こうしたギャップに一党独裁の情報コントロールが加わって種々の憶測を生み、虚実の交錯した中国像が生まれています。

 一つ一つの現象や事実はジグソーパズルのピースに過ぎません。どういう全体像を描けばよいのか、常に考えてみる必要があります。

公を信じない中国人と官に飼い慣らされた日本人

◆日本人から見ると、中国はコネ社会だ、中国人は行列に並ばない、いい加減だ、といった意見をよく耳にします。そうした事例を挙げることは難しくないですし、実際にそうしたことを体験した日本人も多いでしょう。
 しかし、ただそれを非難してみてもしょうがありません。表面的な事象であれこれ言うのではなく、社会構造や人々の意識、発展段階などをふまえた上で考えれば、遭遇する出来事も想定の範囲内となります。歴史や文化に根ざした慣習や制度というのは、その地においては一定の合理性を持つものです。日本だってなぜ談合がなくならないのか、悪いと分かっていても繰り返されるのはやはり理由があるからでしょう。
 
 中国の場合、例えば前述のような現象は、公や制度に対する信頼のなさと表裏一体と考えることができるのではないでしょうか。制度はあっても何事も人を介在させなければできないし、大人しく行列に並んでも順番は回ってきません。
 善悪の問題ではなく、庶民は公や制度が信じられず、自分が損しないような行動をとっているだけです。かたや日本人はよく言えば官に対する信頼が強いのですが、官に盲目的に依存し、言いなりになっているとも言えます。

「自粛」という日本語を正確に中国語に訳すことはできません。なぜなら中国社会には日本でいう「自粛」の概念が存在しないからです。中国人から見れば「不祥事で活動を自粛」「賞与の自主返納」といった日本人の行動は理解不能でしょう。厳罰に処されるかそうでないか、法の網に引っかからなければそれで問題は解決済みであり、社会の非難を受けることなどどうでもいいことで、自分からわざわざ「申し訳ありません」と行動で示すことはありません。
 日本人から見ればふてぶてしく見えるかもしれませんが、これもお国柄です。

どちらが合理的な社会か?

◆「公のために自分を犠牲にする」といったこともあり得ません。自分が犠牲になっても他の人がいい思いをするだけだからです。 

 北京や上海などの大都市は近年大変な交通渋滞ですが、誰もマイカー通勤を止めようとはしません。自分が止めても交通渋滞は解消されるはずがないからです。同じ渋滞なら満員バスよりもマイカーの中の方がマシ、というわけです。
 こうした問題に対し、同じ中国人(華人)国家のシンガポールでは徹底的な規制を設けることで、また香港では通行料の徴収など経済コストを負担させることで交通量をコントロールしています。中国でもこうした方策をとる時期にきていますが、いずれの方式もまだ執行面での問題や市民の反発が予想され、難しいところがあります。
「騙される方が悪い」「儲けた者勝ち」といった「何でもあり」は、これまで中国社会の活力につながっていたのは確かです。
 
 しかし、最近はその弊害の大きさの方が目立ってきています。ニセ物の蔓延や食品の安全性に関する一線を越えた企業や個人の行動は、こうしたことに寛容な国民もそろそろ安心を得るためのコストが上昇していること実感しています。
 公や制度が信頼できないことも国民(あるいは地方)が政府の施策に対して非協力的で、面従腹背を生む原因となっています。
 
 また、中国では仕事の仕方がアバウトで万事が結果オーライな面があるのも事実でしょう。中国ではマンホールを作る時に誤差を見込んで蓋の予定寸法より大きめの穴を作り、実際にできた蓋の大きさにあわせて穴の周りを固めるのだそうです。日本ではそれぞれの寸法を細かく決め、ピタリと蓋を嵌めこみます。
 この例など、中国のやり方はいい加減に見えるかもしれませんが、蓋も穴も寸分違わずに作ろうとするよりも現実的で、コストも安上がりかもしれません。逆に言えば、日本社会は何につけ精緻さを要求する分、必要以上のコストを負担しているのかもしれません。どちらが正しいか、という問題でもないように思います。









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