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更新日:2007年8月23日(木)
特集

『世界潮流と10の選択ポイント』(寺島実郎〜4)



9.貿易における対中と対米の逆転

日本貿易史上初のことが起きている

 今、日本の対米貿易は、06年の年度で17.2までに落ちました。中国との貿易比率は17.4になっています。3年くらい前までの数字では、日本における対中国貿易でアメリカを追い抜いたとマスコミでも話題にしましたが、今回の最新数字は、それとは意味が違っています。あれは、中国と香港を足した数字でした。しかし、今回の17.4という数字は、中国本土単体を相手にしたものなのです。日本の貿易歴史上、初めて中国がアメリカを追い抜いた年として記憶されるでしょう。

貿易構造の変化(アジア・大中華圏への比重移動)5分の1を割った米国との貿易

輸出に占める比重:1990年―2003年―2004年―2005年―2006年
      米国: 32%   25%   22%   23%   23%
      中国:  2%   12%   13%   13%   14%
    大中華圏: 16%   28%   30%   30%   30%
     アジア: 31%   46%   48%   48%   48%
輸入に占める比重:1990年―2003年―2004年―2005年―2006年
      米国: 22%   15%   14%   12%   12%
      中国:  5%   20%   21%   21%   21%
    大中華圏: 11%   25%   26%   26%   26%       
     アジア: 29%   45%   45%   45%   44%
    (中東): 13%   13%   14%   17%   19%

(ア)貿易総額に占める比重も2004年には、米国18.6%、大中華圏28.3%、アジア47.0%
(イ)05年には構造変化は加速:米国17.9%、大中華圏28.2%、アジア46.6%、中東7.9%
(ウ)06年の貿易総額に占める比重:米国17.5%、大中華圏27.8%、アジア45.7%、中東10.5%
*ユーラシア大陸との貿易比重は、輸出67.5%、輸入75.7%

アジア大移動時代の到来

 さらに、日本人出国者の数字でこれも歴史上初めてのことが起こっています。06年の1754万人出国者のうち、米国が367万人、中国が377万人で、中国が米国を追い抜きました。アメリカの数字の内、ハワイ、グアムが7割ですので、本土に行っている人は3割程度です。しかも、95年に比べ、百万人以上の減少です。

・日本人出国者:1754万人(06年)←―1108万人(95年)
    内米国: 367万人(06年)←― 475万人(95年)
    内中国: 377万人(06年)←―  87万人(95年)
・訪日外国人 : 733万人(06年)←― 335万人(95年)
    内米国:81.7万人(06年)←―   54万人(95年)
    内中国:81.2万人(06年)←―   22万人(95年)

 また、同じく06年の訪日外国人733万人のうち米国が81.7万人、中国が81.2万人です。約30万人が観光客ですが、ビザの規制があっての数字ですので、この規制が緩和されたときには観光客の数も桁が変わってくるでしょう。羽田と上海の直行便が年内に飛ぶようになっていますので、今年は間違いなく中国が米国を上回るでしょう。
 その裏づけの数字は、06年の中国の海外渡航者数3452万人(上海への出国社1359万人を含む)ですから、上海を除いても2000万人の需要がそこにあるのです。ここにアジア大移動時代の予兆を感じるのは不思議ではないでしょう。


10.極東ロシアと北海道の新しい時代

ウラジオストックの活況と2012年のエイペック開催

 最後に極東ロシアと北海道について触れます。
今まで「環日本海構想」などと言ってきましたが、「環」と言いながらも極東ロシアの部分がブラインドになって「環」になっていなかったのです。たとえば九州などは、環渤海経済圏ということで「台湾・中国・韓国」の成長エネルギーを吸収しながら九州という島が活性化しているのですが、同地の経済人が最近、この渤海経済圏を主張するようになってきています。

 北海道の場合、近隣のロシアが低迷し続けてきたのですが、ここにきてロシアが激変してきています。2012年にウラジオストックでエイペックの総会が開かれることになっています。この前、プーチンがこの地区を訪れて5000億円のインフラ投資をするという元気な話を打ち上げていっております。購買力、消費力が非常に伸びています。
 街には札幌並に日本車が走っています。その8割がトヨタです。どれも中古車ですが、世界の中古車市場がトヨタを高く評価しています。日本海側の港から極東に向けて中古車が輸出されているのです。中古車のディラーが部品を飛行機で運んでいるほどの需要があります。果物のような日本の高級生鮮品までが、店頭に並んでいます。それほど購買力をつけている、ということです。極東ロシアというのは、日本人にとって近くて遠い地域でしたが、北海道こそもっと極東ロシアとのアクセスを強化すべき地域だろうと思います。
 今、ウラジオストックへの直行便が新潟から週2便、富山から週2便が出ていますが、北海道からのウラジオストック便がないというのは、いかにも戦略性に乏しくて残念であります。

北海道が掴む世界見直しの好機

 この前、ウラジオストックの極東工科大学へ行って、室蘭工業大学と私の率いる戦略研究所の3者で戦略提携のサインをしてきた話を冒頭でいたしました。これは、この両大学の技術を生かしあおうということです。すでに波状的に教授の交流が始まっています。
 北海道にとっては、極東ロシアの展開が新しい局面を迎えていることは確かですし、極東ロシアとのダイナミズムを捉えながら、交通インフラを整備するなど、成長する極東ロシアとの連携を視野に入れることで、室蘭工大を押し出していったというのが今回の協力の背景にあります。

 日本人にとって戦前まではウラジオストックが、欧州への入り口でした。日本にとって欧州の東端だったのです。その頃の日本人は、極東ロシアを視野に入れていたのです。ところが戦後になって、アメリカ一辺倒のものの見方しかできなくなった昨今です。日本海側を裏日本と称していたほどです。
 現代の日本人は、情報化社会に生きているなどと思っていても、実はアメリカを通してしか世界を見ていないのです。世界を歩き回ってみると、極端に狭い視界しかもっていない、というという奇妙な国民になっているのです。

 そのことにも気付いてこの北海道という島の今後の針路を見定めていきたいと思うところです。環日本海ということも今までと違った動きになり得るでしょうし、地元大学の動きについても、北海道の人たちはもっと注目してほしいと思っています。



≪おわり≫







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