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更新日:2007年8月20日(月)
続・柏艪舎の香り風

第21回 フューチャー・ベストセラー!

柏艪舎に新たなシリーズ誕生



NYタイムズの広告
青山万里子 柏艪舎・編集部

 2007年6月、柏艪舎に新たなシリーズが誕生した。
 その名は〈F☆Bシリーズ〉。“フューチャー・ ベストセラー”の頭文字を取ったものだ。未知なる才能を発掘し、世に送り出そうという試みであり、ビジネス特許も取得している(2007年6月特許出願公開 整理番号HRS0501 出願番号:特願2005‐348206)。

 2005年9月11日、弊社は『NYタイムズ』紙に原稿募集広告を打った。“ハリウッドのアクション映画のような作品に満足しているのか?”という挑発的な文章を掲載したところ、その日のうちにEメールが続々と舞い込んだ。その後も着々と原稿は送られてきた。8月現在、74編の作品が寄せられ、四作品と契約を結んでいる。
 その4作品のうち、第1回配本となったのが、今年6月に発売された『叛逆のとき』(原題『The Treason’s Time』フランク・マカダムス著 山本光伸訳)だ。これは原稿応募第1号であり、著者は南カリフォルニア大学でライティングクラスを受け持っている。

 原稿はまず、インターカレッジ札幌のリーダーたちと英語ネイティブスピーカーが読み、その後編集部で何人かが目を通し、最終的に代表が読むという三段階のチェック体制を取っている。本書はリーダーたちから、題材・内容とも高い評価を受け、出版に至った。
 本書は第二次大戦直後の日本とアメリカが舞台となっている。ダグラス・マッカーサー元帥の下、米CIC防諜部に所属する主人公の将校は東京ローズ≠フ活動が叛逆罪に該当するか否かの調査を任される。人種偏見や政治的要請が渦巻く中、彼はただ一人自分の信念を貫き、“東京ローズ”の無罪(国家叛逆罪で起訴することはできないこと)を主張する。本書は、組織の中で苦闘する人間の姿、また、国家とは、正義とは何かということが描かれた秀逸のノンフィクション・ノベルである。

 そして、8月下旬発売予定の第二回配本は、『ある彷徨(さまよ)えるユダヤ人の愛の物語』(原題『The Translator』ハーマン・タウブ著 山中朝晶訳)。これは、ナチスによるユダヤ人迫害、ホロコーストを生き残った実在の人物を主人公にしたノンフィクション・ノベルだ。著者自身もホロコーストを体験したユダヤ人である。彼らは肉親や友人を失い、自分だけが生き残ったことに罪悪感を覚えながらも、自らの体験を語ることで、非業の死を遂げた家族の記憶を受け継ぐ義務を果たそうとする。
 ホロコーストを扱った書物は数多く出版されているとはいえ、ホロコーストからの生還者がその後どのように生きてきたかが描かれたものはそう多くないだろう。彼らは戦後、国を追われ、その多くはアメリカや南米に逃れるか、パレスチナへ移住してイスラエルを建国した。
 現在、世界各地で起こっている紛争の多くはイスラエル問題が根底にあると言われているときに、ユダヤ人の“真実の姿”を知ることには当然大きな意味があるだろう。ホロコーストを体験したユダヤ人がなぜ今日、他国にホロコースト(迫害)まがいのことをするのか、という素朴な疑問もある。

 ホロコースト=ユダヤ人という単純な、あるいは感傷的な図式でとらえることは、おそらく百害あって一利なしであろう。ただ、本書には、ホロコーストによって人間性を奪われた人々の友情を、信念を、信仰を、そして家族愛を取り戻していく姿が誠実に描かれている。終戦記念日を迎えたこの時期に、多くの日本の方々に本書を読んでいただければと思う。





 今年末から来年にかけては、第3回、第4回配本がすでに決まっている。さらに、9月以降には再度NYタイムズ紙に原稿募集広告を打つ予定だ。アメリカではまったく無名の、しかも日本の出版社が相手にもかかわらず、70編以上もの応募があったのだ。今回は2作品が本として発売されたとなると、前回以上の反応が期待される。

 今回、『叛逆のとき』と『ある彷徨えるユダヤ人の愛の物語』の二作品に携わり面白かったのは、著者とのやり取りだった。特に、『叛逆のとき』は、マッカーサー元帥や東条英機など日本でもよく知られている人物が登場するため、事実関係の確認には細心の注意を払った。調べていると、著者の勘違いというのもあった。
 たとえば、原文をそのまま訳すと『東条英機が切腹した』となってしまうのだ。“セップク”は“ハラキリ”とは違い、単に“自殺する”という意味だと思っていたらしい。当然、これをそのまま訳出すれば、日本の読者からは苦情が殺到することだろう。
 そのほか、前後関係で辻褄が合わなかったり、冗長にすぎる箇所は、どうしても出てきてしまう。通常、日本で翻訳出版する場合、アメリカならアメリカの出版社が国内で出版したものであり、当然アメリカの編集者がすでに目を通しているはずだから、このようなことはまず起こらない。しかし、著者と直接やり取りをして作品を作り上げていくのが面白いのだ。

 明治以降今日に至るまで、日本での翻訳出版はほぼ例外なく、外国の出版物をロイヤルティを払って購入し、それを一字一句揺るがせにせずに翻訳し、出版するというものだった。弊社代表の言葉を借りれば、すでに出来上がっているものを交換したり見せ合ったりするのは“ショー”ではあっても、果たして“文化的活動”と呼びうるものなのか。作家が編集者を育て、編集者が作家を育てる、つまり互いに影響し合い補完し合って一つのものを作っていく。このような関係を翻訳出版の場で確立したい、そんな思いから出発したのが、この〈F☆Bシリーズ〉なのだ。

 これからも英米だけに留まらず、世界各国の未知なる才能を発掘していきたいと思っている。書店の棚に〈F☆Bシリーズ〉の本がずらりと並ぶ日もそう遠くはないだろう。そしていつの日か、この中からノーベル文学賞作家が誕生するかもしれません!
 今後のラインアップにぜひご期待ください。そして、〈F☆Bシリーズ〉への応援をよろしくお願いします。




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