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更新日:2007年8月20日(月)
特集

『成長する中国との付き合い方』(遊川和郎〜1)

〜『中国を知る』(日経文庫1131)著者の遊川和郎(北海道大学准教授)に聞く



遊川和郎 北海道大学准教授

プロフィール:1959年広島生まれ。東京外国語大学中国語科卒。1981〜83年上海復旦大学留学。鞄立製作所、外務省専門調査員(在香港総領事館)、(株)日興リサーチセンター上海駐在員事務所長等を経て、1998年より北海道大学言語文化学部助教授。2001〜2003年外務省専門調査員(在中国大使館)。2007年より北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授。著書に『華人経済ネットワーク』(実業之日本社、共著)、『現代中国を知るための60章』(明石書店、共編著)、最新刊に『中国を知る』(日経文庫)など。

 中国ウオッチをし続ける専門家に近著をベースにして、中国の正確な見方についてお話を伺った。それは、日本が他国との付き合い方を通して生き残るための「最小のコスト」と「最低のリスク」を求めることにほかならない。

1.今の中国を見つめる

――中国の世界経済への躍進ぶりは、想像を絶するものがありますが、その原動力は何なのか、そしてそのスピードに危険はないのでしょうか?

高度成長期特有の高揚感

◆十数年前、当時の上海市長がこう表現していました。「今の中国は13歳の育ち盛りなんですよ」と。
 つまり、質より量でガツガツと胃袋に入れ、何を食べても体はどんどん大きくなる成長期だということです。今ですと一部が成人に達した「二十歳前」といったところでしょうか。
 日本などそこを通り過ぎ、成人病を気にする段階になった国から見れば「そりゃ体に悪いよ」とか、「周りの迷惑も考えてくれよ」と傍若無人に見える振る舞いに眉をひそめることも起きるわけです。

 今の中国は「豊かになる喜びを知った」国民のエネルギーが成長の原動力です。それは、高度成長期の日本、また一世代前の日本人と共通する点も少なくありません。日本も40年前には、マイカー、マイホームを夢見る猛烈サラリーマンや収入を得るために都会で働く出稼ぎ、地方から集団就職する少年少女、といった現象がありました。
 今の中国も豊かさを手に入れたい一心で、同じような光景が見られるわけです。日本人もエコノミックアニマルと呼ばれていた頃が懐かしくないですか?
 こうした中国にとっての成人式、すなわち世界から大人と認められる儀式の一つが2000年のWTO加盟であり、来年の北京オリンピック開催ではないでしょうか。

隣のお屋敷は30人家族

◆と同時に、中国がなりふり構わず成長しようとすることは、世界中に大きな影響を与えます。何しろ、90年代の10年間で約1億2000万人、すなわち日本一国分の人口が増加し、GDPも約8年で倍増するわけですから、エネルギーなどの資源や食糧、環境問題などへのインパクトは想像を絶するものです。また消費規模だけではなく、その生産動向や貯めたマネーも含めた一挙手一投足が世界経済へ大きな影響を与えていることは周知の通りです。

 たとえて言うならば、親子3人で暮らしている小さな家の向かいに30人の大家族の屋敷があるようなものです。主はそんなに悪い人でもなさそうですし、しっかりした息子さんや感じのいい娘さんもいるようですが、家の中にはちょっと強面のおじさんや騒音おばさんもいたりします。

 きちんとゴミだしのルールも守ってくれればよいのですが、どうもいい加減で、出されるゴミの量も半端じゃない。近所の住民からすれば、ちょっと困った存在であることは間違いない。
 となると、こんな調子で好き放題に振る舞われたらたまったものじゃない、という「脅威論」や、家族の中でいろいろ揉め事もあるみたいよ、という「崩壊論」が近所の噂になったりするわけです。
 
 たしかに噂されるような事象が散見されたり家の中でトラブルもあるようだけど、話に尾ひれがついて大げさに伝えられたり、憶測で話が膨らんでいることも多いでしょう。どちらの家も引っ越しできないわけで、苦情ばかり言い立てても仕方ありません。お互いが共存できる道を模索することが必要でしょう。
 あちらにはあちらの家の事情もあるのでしょうから、それをふまえた上で「何とかしてくれよ」という部分と我慢しなければならない部分、お互い様の部分、などを考えるべきでしょう。
 今回、上梓した著書は、隣の家の家族の横顔や家庭内の多少複雑な事情、基本的な考え方をいろいろな角度からきちんと説明したものです。

2.バイアス(偏り)を排した中国本

――今年(2007年)の3月に発行された日経文庫「中国を知る」は、書店で平積みされていましたが、反響はいかがでしょうか? そもそもの執筆動機は、どのようなものだったのでしょうか?

骨太で高い次元での中国理解

◆以前はこの隣人と実際に付き合わなくてはならない人は限定的でした。しかし近年、経済関係の緊密化と共に、それまで中国とは全く縁のない会社生活を送っていた人が「突然の辞令」で中国ビジネスの現場に送り込まれる例が急増しています。
 数字で見ても、2000年に4万5000人だった日本人の中国長期滞在者(香港を含む)は2005年には11万4000人と2.5倍に増えました。香港を除いた中国本土だけの数字で比較するとわずか5年で約4倍に増加しています。民間企業関係者だけに限ると2005年には米国駐在を抜き、世界で最も日本人ビジネスマンの多い国となりました。

 いきなり中国とのビジネスの現場に送られた人たちは、直面する出来事の一つ一つに右往左往し、中国人の考え方や行動様式に面くらってしまいます。見聞きしたさまざまな情報にも振り回され、現地では駐在員のメンタルヘルスも必要となっているそうです。

 他方、中国、中国ビジネスを解説した本は山ほどありますが、特定のシナリオやバイアスのかかった中国論が幅を利かせています。また特殊な事例や自己の経験を一般化したものが多く、本質を外したものが散見されます。
 目先の事象の解説やハウツーに終始するのではなく、骨太でもう少し高い次元からビジネスパーソンの中国理解を助けてくれるような本のニーズがあるのではないか、もちろん読みやすさは絶対条件、という出版社と意見をすり合わせながら執筆に取り組みました。私自身、そうした書物の必要性は感じていましたし、もうすでに30年近く、一世代相当に及ぶ中国の改革開放をきちんと総括して今後を展望するタイミングでもありました。
 おかげさまでビジネス街や成田、関西など国際空港の書店でよく出ているようですし、各種研修用のテキストにも使っていただいているようです。 
 また、現地で働いておられる方から、「普段から遭遇する問題についてよく理解できた」、「感覚論ではなく、確かな資料とデータに基づいて論点を整理し、分かりやすく解説されている」、「『ああそうだったのか』と納得する場面が多々あった」、などのご意見を頂戴しています。









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