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更新日:2007年8月20日(月)
特集

『世界潮流と10の選択ポイント』(寺島実郎〜1)


 

寺島実郎  (株)三井物産戦略研究所所長

プロフィール:(財)日本総合研究所会長、三井物産鰹務執行役員、早稲田大学アジア太平洋研究センター客員教授。1947年北海道生まれ。73年早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。同年三井物産に入社。調査部、業務部を経て、83年より米ブルッキング研究所(在ワシントン)へ出向。その後、米国三井物産ワシントン事務所長(91年)、三井物産業務部総合情報室長(97年)を経て現職。
(本稿は、07年7月10日(火)札幌で開かれた「第5回北海道寺島塾」の講演記録の要旨である。文責・編集部)



1.時代の不気味さ

日本を除いて世界は経済成長し続けている

 4月にウラジオストックに行ってきたところですので、後半では極東ロシアの動向も含めてお話をします。毎回お配りしている資料は毎月更新をしていますデーター集です。講演時に数字の裏づけを必要とする際に利用してもらっていますが、今回は7月1日に修正したものです。

 今、我々が生きている時代の不気味さというのを改めて確認をしておきたいと思います。
 それは世界中を動き回っていて一番感じることですが、かなりネガティブな意味で世界のビジネスマンの空気が、異様に殺気立った雰囲気です。多分、自分の一生の中で一度あるかないかの大金儲けのチャンスだということですが、“日本を除いて”という意味で大変に重い話になっていくと思います。

 日本だけが景況感がまだら模様で、いろいろな意味で屈折しています。しかし、世界はとにかく火を噴くような成長軌道の只中にあります。これを数字で示します。21世紀に入ってからの6年間で世界GDP実質成長率推移は、
・01年1.8%
・02年2.1%
・03年2.7%
・04年3.9%
・05年3.4%
・06年3.9%
となっています。21世紀に入った5年間で世界GDPは14.7%増、日本は7.5%増、中国は57.7%増となっています。

「BRICs」から「BRIICS」へ

 つい2ヶ月前のOECDの閣僚会議で「BRICs」(ブラジル・ロシア・インド・中国の頭文字)と呼ぶのを止めようということにしました。これまで5%以上の成長率で世界の成長エンジンなどと言われてきた「BRICs」ですが、これからは「BRIICS」と呼ぼうということです。インドネシアの「I」と南アフリカの「S」が加わったのです。それぐらい世界全体がマイナスゾーンのない経済成長を続けているのです。
・04年実質成長率:ブラジル4.9%、ロシア7.2%、インド7.5%、中国10.1%
・05年同実績:ブラジル2.3%、ロシア6.4%、インド8.4%、中国10.4%
・06年同実績:ブラジル3.7%、ロシア6.7%、インド9.4%、中国10.7%
・07年同予測:ブラジル4.3%、ロシア6.3%、インド8.2%、中国10.4%

「コンセンサス」という世界のエコノミストの機関が出している平均的な今年の成長予測値は、3.4%です。昨年の3.9よりは下がっていますが、3%台の成長を続けるだけでも不安な面もあります。世界は3つの「E」(ECONOMY=経済+ENVIRONMENT=環境+ENERGY=燃料)がバランス良くなければ危うい成長ということですが、3%台の成長は、過熱だと指摘する人たちもいます。我々の生きている今は、この3つのEが非常にアンバランスな状態の中に突っ込んでいるということで、不気味さを漂わせているわけです。

2.マネーゲーム化する原油価格

金融経済の肥大化

 次に世界貿易を見たいと思います。つまり、ものの動きです。
 世界貿易伸び率は、
・03年    5.3%
・04年   10.6%
・05年    7.4%
・06年見込  8.9%
・07年予測  7.6%
という勢いです。

 実質、この5年間で年率7%の伸びは、実体経済(世界GDP)の伸びである年率3.5%の2倍になっています。私たちはそのような世界経済の中で生きてきているわけです。この話は、同じ期間に世界株式市場の時価総額が年率14%で伸びていることに繋がります。
 この間、上海の株式市場は4倍にもなっています。その市場が今年の春、グラッとしたわけですが、瞬間的に世界同時不況に反転するのでは? という危機感が世界を走りました。何とか、持ちこたえて今日に至っています。

 つまり、このような実態経済を離れた金融経済の肥大化をどう捉えるのか。言い換えるとマネーゲーム化する世界経済は株価の話だけではなく、エネルギー価格も同様です。
 直近の日本の原油入着価格は、以下のような変化です。
07年(5月) 64.98$B(7845円B)
99年     17.2 $B(1928円B)
 現在は、1バレルの原油を日本の港で受取る時に、円安にシフトしていることもあってほぼ8000円近くの支払をしています。99年から言えば、4倍の価格になっているのです。これは、エネルギーの専門家は需給バランスからこれを説明しますが、本当にそうなのでしょうか。4倍にもなるほど需要が増えているでしょうか、あるいは供給に不安が起きているでしょうか。

プーチンの自信を支えるエネルギー供給力

 たとえば、北海道との関係も深いロシアは、石油生産は増えています。プーチンの自信回復を支えるだけの量になっています。
・03年 849万BD
・04年 929万BD
・05年 948万BD
・06年 972万BD (速報値)です。
 石油換算の天然ガスと原油生産量を足すと、ロシアは2005年に世界一です。因みにベスト5は、
・1位 ロシア     2145万BD
・2位 米国      1679万BD
・3位 サウジアラビア 1198万BD
・4位 カナダ      664万BD
・5位 イラン      577万BD 
といった具合です。

 2000年の沖縄サミットにプーチンが初めて登場した時のロシアと、6年後のロシアとでは全く違う様相を呈しています。蘇るロシアが、世界のセンターラインに戻ってきたわけです。石炭を除く化石燃料の豊富な供給量が背景にあります。北海原油もイラクの原油も数量的には、出ています。ですから、供給量はあります。中国の石油の消費が極端に増えている、という見方がありますが、これも価格を4倍にするほどのものではありません。

マネーゲームのインディケーター、WTIの存在

 では、どうしてそうなるのか? これは、前回にもお話をしましたが、投機的な動きによって原油価格が上昇しています。エネルギー価格に関心のある人は、ニューヨークの先物市場を見てください。必ずWTIの指標でニューヨークの先物市場が説明されています。WTIとは、West Texas Intermediate の略です。West texas は、ヒューストンのことです。ヒューストン地域の石油価格というローカルな話題です。札幌地域で今、石油価格はどうなっているのか、というレベルの話です。

 ところが、この指標が世界を支配する指標になっている。ニューヨークの金融市場に、商品市場にWTIなる指標が上場され、マネーゲームのインディケーター(経済指標)になってしまったのです。WTIの実需は、最大限70万バレルに過ぎません。世界の生産は、ロシアなどの全部を集めても一日8500万BDです。ところが、WTIで取引された去年の実績では、一日に2億5000万バレル〜3億バレルがコンスタントに取引が成立しているのです。








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